ロシアのプーチン大統領(右)と習近平国家主席はマスクを着けることなく間近に並んだ(写真:代表撮影/AP/アフロ)
ロシアのプーチン大統領(右)と習近平国家主席はマスクを着けることなく間近に並んだ(写真:代表撮影/AP/アフロ)

 国際情勢は、よく変わる。筆者が外交官として得た教訓は、時々の情勢に一喜一憂するな、というものだ。ウクライナ情勢も、現時点を取れば、ロシアに不利に、ウクライナに有利に展開しているように見える。しかし決着がつくまでにはなお時間がかかるだろう。

 しかも戦争を始めた以上、決着はほぼ戦場でつく。戦場での力比べは依然としてロシアに有利なのだ。ロシア国内でウラジーミル・プーチン大統領が引きずり下ろされない限り、またNATO(北大西洋条約機構)が一歩踏み込んだ軍事支援を決断しない限り、ウクライナが納得する形での幕引きは難しいであろう。ウクライナの苦難の時は続く。

 前回のコラムでも説明したとおり、中国は米国とのせめぎ合いが長期間続くことを覚悟している。そこを生き抜き、力関係がさらに中国に有利になった時点で、その時の力関係を反映した米中関係、ひいては国際関係を構築したいと思っている。米国をけん制する重要な外交カードがロシアである。2月4日に習近平(シー・ジンピン)国家主席とプーチン大統領が行った北京会談は、米国に対するポジションを強化するため中ロ蜜月を演出する場となった。

 だが2月24日、ロシアはウクライナに対する大規模な侵攻を始めた。ウクライナの頑強な抵抗により、ロシアが当初に描いた「短期間に決着をつける」とのシナリオは崩れた。欧州と米国は、これもロシアの想定をはるかに超えて強く反発し、対ロシア強硬姿勢で見事に団結した。日本、カナダ、オーストラリアなども加わり、いわゆる東西冷戦時代の「西側陣営」が再び出現した。

 このような事態の展開は、中国にとっても想定外だったはずだ。あの強大なロシアが、弱小国であるウクライナに、ここまでてこずるとは思っていなかっただろう。「西側陣営」の再登場は間違いなく計算外だったはずだ。しかも、時は中ロ蜜月を演出した直後。中国がロシア批判を控え、しかも事態が悪化した責任を米国に転嫁するキャンペーンを行っている真っ最中だ。このため中ロ対「西側陣営」の対立の図式が固まり始めた。

 これは中国指導部の望むところでは決してない。米国との長期戦を生き抜くためには、ロシアとの緊密な関係だけではなく、欧州が米国と付かず離れずの関係を続けることが必須の条件だからだ。だが、米欧が一体化し、しかも中ロと対立する構図が固まれば、中国の生存空間は大きく狭まる。経済規模を見れば、中ロは西側の3分の1にも満たない。ましてや対ロシア制裁により中国と西側との経済の分断が進めば、中国経済の持続的発展は不可能となる。

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