金正恩は対外代表権を手にするか?

 同会議で憲法が改正された。ただし、内容はまだ公表されていない。しかし、最高人民会議で決定された内容から、政府機関の組織の名称に変更はないものの、政治制度では国務委員会委員長以外にも変更があったことが分かる。それは国家元首であった最高人民会議常任委員会委員長である。

 最高人民会議常任委員会委員長は、金永南(キム・ヨンナム)から崔龍海に交代した。約20年間にわたって、国家元首として第三世界を歴訪してきた高齢の金永南はようやくその職を離れることになった。

 ただし、崔龍海が就任した最高人民会議常任委員会委員長が以前と同じ制度による役職なのかは分からない。というのは、崔龍海は国務委員会第1副委員長に就任しており、最高人民会議常任委員会委員長を兼任することになったからだ。これもまた異例なことである。行政機関のサブリーダーが立法機関のリーダーになる。北朝鮮では今までなかった制度だ。ただし、これが何を意味するのかはまだ分からない。

 最高人民会議常任委員会委員長の対外代表権が外された可能性もある。改正された憲法が公表されて、最高人民会議常任委員長が対外代表権を持つ根拠となっている憲法第117条が削除されるか、変更されていることが確認できれば分かるのだが、今のところは分からない。もし、対外代表権が外されていれば、対外代表権は国務委員会委員長に与えられることになるであろう。

 もし、国務委員会委員長に対外代表権が与えられたのであれば、国務委員会委員長が国家元首になる。対外代表権を基準とすれば、国務委員会委員長という名称は変わらなくても、議院内閣制から大統領制に移行したことになるのだ。ただし、その大統領は、選挙を経ずに議会で選ばれている。大統領制というよりも、いわば選任制の君主(選挙君主制)かもしれない。

 もちろん、国務委員会委員長に対外代表権が与えられているかは、まだ分からない。それは改正された憲法の内容が明らかになれば分かることである。現在のところ、分かっているのは、執政長官が選挙を経ずに選ばれたことと、行政機関のサブリーダーが立法機関のリーダーになったことである。これだけのことではあるが、北朝鮮の約70年間の執政制度の歴史における大きな変化と言える。

(敬称略)

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