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金正恩氏は国務委員会委員長に再任された(写真:KNS/KCNA/AFP/アフロ)

 朝鮮で4月11日からの2日間、最高人民会議が開かれ、金正恩氏が国務委員長に再任された。同氏は先例を破り、最高人民会議の代議員の資格を持たないまま最高指導者を続ける。一連の人事から、同氏の政治基盤とミサイル開発の強化を垣間見ることができる。

(聞き手:森 永輔)

北朝鮮で4月11日と12日、最高人民会議(日本の国会に相当)が開かれました。武貞さんは今回の会議のどこに注目しましたか。

武貞:やはり人事です。金正恩(キム・ジョンウン)委員長が「大統領になるのでは」という予想がありました。最高人民会議に先立って行われた、代議員選挙で金正恩委員長が代議員にはならなかったからでしょう。これまで北朝鮮では、同委員長の父である金正日(キム・ジョンイル)も祖父である金日成(キム・イルソン)も、最高指導者(現在は国務委員長)であると同時に代議員でした。金正恩委員長はこの慣例を破ることになったので、「最高指導者として別の肩書が必要になる」とみられていました。

武貞 秀士(たけさだ・ひでし)氏
拓殖大学大学院客員教授 専門は朝鮮半島の軍事・国際関係論。慶應義塾大学大学院博士課程単位取得退学。韓国延世大学韓国語学堂卒業。防衛省防衛研究所に教官として36年間勤務。2011年、統括研究官を最後に防衛省退職。韓国延世大学国際学部教授を経て現職。著書に『韓国はどれほど日本が嫌いか』(PHP研究所)、『防衛庁教官の北朝鮮深層分析』(KKベストセラーズ)、『恐るべき戦略家・金正日』(PHP研究所)など。

 しかし、北朝鮮が大統領制を取ることはありません。理由の第1は、憲法第100条により国務委員長が最高指導者であり、新たな権威を保証する肩書は不要だからです。第2は、大統領という「名称」です。ドナルド・トランプ米大統領も、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領も「大統領」です。金正恩委員長が3番目の大統領になることを選ぶのは考えられないことです。

 結果として、金正恩委員長は代議員の資格を持たないまま国務委員会の委員長に再任されました。