撤退報道が相次ぐ自動車メーカー

 また特に最近大きな動きが目立つのは自動車業界である。航空機メーカーに比べ対応が遅れていた自動車メーカーはここにきて撤退や工場の大陸移転を加速させている。

 2月3日、日産自動車が欧州でのディーゼル自動車販売の低迷とブレグジットによる不確実性を理由に、エクストレイルの次期モデル生産予定を撤回。同社に政府支援パッケージを付与する条件に、次期モデルの生産があったため、政府は支援(8420万ポンド=約123億円、その後6100万ポンドに減額)の内容を公開し、内容を是正する旨を発表している。

 日産同様にトヨタ自動車や米フォード・モーター、独BMWなど国外メーカーのほか、英アストン・マーチンや英マクラーレンなど英国内メーカーも支援公約を受けていた事実が判明している。しかし日産同様に、議会と政府が膠着(こうちゃく)状態に陥り、英国政界のどっちつかずの状態が続いているのに嫌気がさし、撤退報道が続いているのが実情だ。

 3月5日に、BMWの経営陣は、合意なき離脱の際には、英国でのエンジン生産の一部をオーストリアのシュタイアー工場へ移転する可能性や、オックスフォード工場におけるミニの生産を終了する意向を示した。さらにトヨタも、合意なき離脱の際には2023年までに英国工場から撤退の可能性を示唆している。

 合意なき離脱による欧州サプライチェーンの分断は、英国政府からの支援を無力化させるほどのインパクトがあるといえる。離脱日前後で工場の操業が停止するのはもとより、撤退を検討する企業は後を絶たない。離脱を巡る政治的な不確実性が収束しない限り、英国進出企業の危機対策が終わることはないだろう。直近の英国自動車生産・販売車協会の発表によれば、英国の1月の自動車製造台数は前年同月比で18.2%減と、8カ月連続の減少を記録している。

EU産の完成車には10%の関税導入へ

 EU経済よりも英国経済への影響が長期・短期ともに大きいとされているが、英国との輸出入に依存しているEU企業も大きな影響を受ける。

 英国政府は3月13日に、合意なき離脱の際の暫定的な関税表を発表した。それによると輸入額の87%に相当する財については無関税になるという(現行ではEUとの関税同盟により同80%が無関税)。ただし英国の自動車産業を保護すべく、EUからの輸入車へは一律10%の関税を適用する。これに対しEUは反発を強めている(自動車部品は非関税)。

 合意なき離脱への対応は急速に進んでいるものの、離脱後の混乱は長引き、予期せぬ悪影響を社会の様々な側面に及ぼす恐れがある。首相官邸は4回目の離脱協定案の議会採決を模索するなど、ブレグジットに対する議会採決は、すでに泥沼化しており、次に何が起こるかは誰も予想できない。英国・EU企業ともに合意なき離脱への警戒感は高まるばかりである。

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