英国が2月、CPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定=いわゆるTPP11)への参加を申請した。CPTPPは環太平洋11カ国から成るメガ自由貿易投資協定だ。英国の参加を機に、この参加国が欧州、中国、米国へと拡大する勢いがつく可能性がある。その中心的役割を果たすのが日本だ。なぜ、CPTPPの参加国が拡大するのか。そこで日本が果たす役割とは。中国経済の専門家である瀬口清之氏に聞いた。

(聞き手:森 永輔)

CPTPP署名式で記念撮影にならぶ各国の閣僚。日本からは茂木敏充経済財政・再生相(当時、右から2人目)が出席した(写真:AFP/アフロ)
CPTPP署名式で記念撮影にならぶ各国の閣僚。日本からは茂木敏充経済財政・再生相(当時、右から2人目)が出席した(写真:AFP/アフロ)

インド太平洋地域を舞台にした米国と中国の外交合戦が一段落しました。

 バイデン米政権は3月12日、日本、米国、オーストラリア、インドの4カ国(QUAD)の首脳によるテレビ会議を初めて開催。3月16日には日米外務・防衛担当閣僚協議(2+2)、3月18日には米韓2+2、と2国間協議を相次いで展開。そして3月18日、米アラスカ州アンカレジで米中外相会談を行いました。3月25日は、北朝鮮がおよそ1年ぶりに弾道ミサイルを発射しています。

 一方、習近平(シー・ジンピン)政権はこれと並行するように、中国、ロシア、韓国、北朝鮮の協調をアピールする場を設けました。ロシアのラブロフ外相が3月22日に中国を訪問し、王毅(ワン・イー)外相と会談。ラブロフ外相は3月25日には訪韓し、韓国の鄭義溶(チョン・ウィヨン)外相と会談しました。一連の振り付けをしたのは習近平政権といわれています。

 瀬口さんは一連の動きのどこに注目しますか。

瀬口:私は、日本の対中姿勢がアジア諸国の中で突出して厳しい内容だったのが気になりました。日米2+2後の共同文書で、中国を名指しで批判しました。

日米2+2共同文書

  • 中国による、既存の国際秩序と合致しない行動は、日米同盟及び国際社会に対する政治的、経済的、軍事的及び技術的な課題を提起していることを認識した。
  • 中国海警法等の最近の地域における混乱を招く動きについて深刻な懸念を表明した。
  • 南シナ海における、中国の不法な海洋権益に関する主張及び活動への反対を改めて表明し、1982年の国連海洋法条約の下で設置されたフィリピンと中国との間の仲裁裁判所の2016年7月の判断が最終的であり、当事国を法的に拘束することを想起した。

 米国が同盟国などと実施した4つの会議・協議後にまとめた文書で、中国を名指しで非難したのは日米のこれだけです。QUAD首脳会議後に発表した「日米豪印首脳共同声明:『日米豪印の精神』」の中に「中国」の文字は入っていません。インドが反対したためとされています。米韓2+2後の共同声明も、中国に直接言及していません。

 日本が中国を名指しで批判したことに対して中国は厳しい反応を示しました。日本の垂秀夫駐中国大使が3月18日に天津を訪れた際、同市トップの李鴻忠・同市共産党委員会書記が「香港、新疆ウイグル自治区、台湾への干渉は中日関係を損なうもので、非常に遺憾だ」と批判。これに対して垂大使は「その発言は受け入れられない」と反論しています。

続きを読む 2/5 政治を理由に、経済のデカップリングは実現しない

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