2022年秋に予定される中国共産党大会後の李克強氏(右)の処遇が注目される(AP/アフロ)

 中国では毎年3月に2つの重要会議が開かれる。1つが全国人民代表大会(全人代)の全体会議であり、もう1つが中国人民政治協商会議のそれである。ともに年1回しか開かれない。これら2つを総称して「両会」という。

 前者は日本の国会に相当する。後者は中国独特のもので、中国共産党が政権を奪取した1949年に、社会各層の代表を集め、彼らと相談しながら国政を進める場として設立された。その後、有名無実化し大きな変革がなされないまま今日に至っている。このため、実際の権限を持つ全人代の方に自然とスポットライトが当たることになる。

 全人代は、憲法が「最高国家権力機関」と定めている。すべての権力は人民に属し、人民が国家権力を行使するための機関が全人代であると規定する。故に党の機関を除くすべての国家機関を監督し、トップ人事を決定し、法律を制定することができる(地方では地方の人民代表大会が同じような職責を持つ)。

 この全人代の権能と「共産党の指導」との関係は微妙である。憲法は「共産党の指導」は「中国の特色ある社会主義」の最も本質的な特徴である、とさらりと書いているだけだ。

 ところが今回、全人代の組織法が改定され、全人代は「共産党の指導を堅持する」と明記した。すべての権力は人民に属するが、それは「共産党の指導」の下に行使できる権力にすぎず、「共産党の指導」が中国の統治の本質だということをさらにはっきりさせた。習近平(シー・ジンピン)政権において、これまでオブラートに包まれていたものをはっきりさせ、制度化し規則化したわけだ。中国社会全体に対する管理の強化も、この流れと無縁ではない。

 今回の全人代も、「共産党の指導」に従い、共産党中央委員会が昨年10月に明らかにした「第14次5カ年計画及び2035年長期目標に関する提案」を具体化する作業が中心となった。

制度改定は李克強追い出し策か?

 今回の全人代で注目される1点目は、全人代そのものの改革である。一例を挙げれば、全人代組織法を改定し、閉会期間中に国務院の首相を除く副首相、国務委員などを常務会が任免できるようにした。

 この改定は、李克強(リー・クォーチャン)氏の後継となる国務院首相に、自身にとって好ましい人物を随時抜てきできる仕掛けを習近平国家主席が作ったもの、という説がもっぱらだ。習近平国家主席が自身の権限強化を着実に図ってきた現実は、この見方を支持する。

 この仕組みを理解するために、中国の制度を少々説明しよう。2022年秋に開かれる党大会で次の総書記や政治局常務委員が決まる。続く23年春の全人代において、国家主席と国務院首相が任命される。18年の憲法改正により国家主席の任期制が廃止されたため、習近平国家主席は続投が可能だ。しかし、国務院首相の任期は元のままで2期しか続けられない。すなわち、李克強氏は習近平国家主席より若いにもかかわらず国務院首相を退任するしかない。

続きを読む 2/3 中国に、方向性を修正する気配なし

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