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 英国議会下院がBREXIT(EU=欧州連合=からの離脱)延期申請に青信号を出したことで、3月29日に合意なしの無秩序な離脱が起きる可能性は遠のいた。だがBREXIT延期は英国にとっての時間稼ぎに過ぎず、離脱の条件をめぐるEUと英国との対立は残ったままだ。ハードBREXITという妖怪が完全に消え去ったわけではない。
BREXITの延期をめぐる下院採決に向かうメイ英首相(写真:AP/アフロ)

 英国議会下院は3月14日夜、BREXITの延期をEUに対して申請する動議を賛成413対反対202の圧倒的多数で可決した。

 テリーザ・メイ首相はEUの「憲法」に相当するリスボン条約の第50条に基づいて、離脱の延期を申請する。ただし、他の27のEU加盟国が全て同意しなくては延期は認められない。

 EUのドナルド・トゥスク大統領は、「英国がBREXITについて考え直すためにさらに時間を必要とするならば延期に賛成しよう」と他の加盟国に呼びかけており、延期が認められる公算は大きい。

 3月29日に合意なしの離脱が実行され、ドーバー海峡でトラックが渋滞し、税関が大混乱、欧州大陸と英国の間の物流が一時的に滞る危険は遠のいたと言える。延期の期間はまだ決まっていない。メイ首相は「私が来週、議会に採決を求める離脱案が可決されれば、6月30日までの延期となる。しかし否決された場合には、さらに長い期間にわたって延期されることになるだろう」と述べている。

議会が下した理性的な決定

 メイ首相とEUが合意した離脱案は、1月と3月の2度にわたり英国議会下院が否決している。同首相はこの離脱案の承認を下院に再度求めるとしているが、すでに「死に体」の同案を、3月29日までに下院が可決する可能性はゼロに等しい。このため英国が合意なき離脱を避けるために残された道は、離脱の延期以外になかった。この意味で、延期申請に関する動議を議会が承認したことは、理性的な決定だと言える。

 メイ首相は元々「我々は3月29日にEUを出る」と宣言していた。つまり、今回、英国議会下院が同首相に離脱延期を申請するよう指示したことは、同首相にとって大きな敗北を意味する。

 この前日、つまり3月13日にも英国議会下院はメイ首相にとって屈辱的な決定を行っていた。同首相はこの日、英国が3月29日に合意のないままEUから離脱するべきか否かについて採決を求めた。だが同首相の動議は採決直前に「英国は(3月29日だけではなく)いかなる状況でも合意なしの離脱は行わない」という内容に変更された。この動議は過半数の議員によって承認された。ようやく英国議会も、合意なしでEUから離脱する危険性を認識し始めているのだ。

 挫折しても戦い続けるメイ首相のファイトは大したものだが、1月以来の度重なる敗北のため、首相としての指導力、求心力が大幅に弱まったことは否定できない。