ダウ工業株30種平均は2000ドルを超える下げ幅を記録した(写真:ロイター/アフロ、写真はイメージ)

 中国で新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)の存在が報じられた当初、株式市場はほとんど反応しませんでした。それからまだわずかの時間しか経っていないにもかかわらず、新型コロナは世界の株式市場にとって大きな脅威となっています。

 3月9日の日経平均は、2019年1月以来の2万円割れ。米国では、ダウ工業株30種平均の下げ幅が2000ドルを超えました。株式市場だけではありません。為替市場ではドルが売られ、対円では1ドル=101円台まで円高が進みました。

 まさに「コロナ・ショック」とでも呼ぶべき状況を呈しています。以下、この問題について、短期と長期の観点からそれぞれ考えてみます。

短期的にはトランプ氏の決断がポイント

 金融市場がここ数日、混乱した原因として、原油安やアルゴリズム取引の影響などが指摘されています。ですが、これらは本質的な問題ではないと考えています。

 原油安は、市場の激変による景気の悪化を織り込んだもので、「原因」でなく「結果」です。アルゴリズム取引にこれほど大きな市場の変動を起こす力はないでしょう。私は新型コロナ対策に消極的なドナルド・トランプ米大統領の姿勢が市場を激変させた主因と考えています。その理由を説明します。

トランプ氏が対策の障害に

 当初、新型コロナの被害は東アジアが中心で、トランプ氏は高みの見物といった態度を取っていました。新型コロナが米国に上陸しても、その姿勢は変わりません。「米国は大丈夫」という姿勢を貫いています。

 しかし本当にそうでしょうか。米国でも感染者数、死者数ともに増加を続けています。早期に本格的な手を打たねば大変なことになる恐れもあるでしょう。

 皮肉なことに、対策強化の障害になっていると思われるのが本来先頭に立つべきであるトランプ氏だということです。トランプ氏はこれまで大丈夫と言い続けたため、ここで「米国が危機的な状況にある」と発言すれば嘘をついたことになります。大統領選を控えて、そうした状況は受け入れがたいでしょう。

 さりとて現状を放置すれば、新型コロナ患者が米国中にあふれることになりかねません。これが最悪のシナリオです。今回の金融市場の激変は、この最悪シナリオを市場が警戒したものと考えています。

トランプ氏が迫られる二者択一

 今後この問題についてトランプ氏は選択を迫られることになるでしょう。あくまで「米国は大丈夫」と主張して対策強化を先送りにするのか。それとも、「米国は大丈夫」という前言を撤回して、米政府の総力を挙げて対策を強化するか。この2択です。

 前者を選んだ場合、株式市場は一段安ということになると考えられます。逆にトランプ氏が後者を選んだ場合、市場では安心感が広がり、株価は上昇すると予想しています。

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