国連安保理の議場。ロシア非難決議は同国が拒否権を行使し否決された(写真:ロイター/アフロ)
国連安保理の議場。ロシア非難決議は同国が拒否権を行使し否決された(写真:ロイター/アフロ)

 ロシアによるウクライナ侵攻は中東にも大きな影響を及ぼしている。中東の多くの国が小麦やヒマワリ油などの食糧品をロシアとウクライナから輸入している。パンが値上がりするなどで、新型コロナウイルス感染拡大で疲弊している国民生活にとってはダブルパンチだ。他方、政治・外交面では中東諸国の対応にはさまざまな要因から差が出ている。

 国連は2月25日、米国とアルバニアが提案したロシアを非難する安保理決議案を採決に付した。賛成が11と多数となったものの、ロシアが拒否権を行使したため、決議案は否決された。ちなみに、棄権したのは中国、インド、そして中東からアラブ首長国連邦(UAE)の3国であった。

 中国やインドはロシアとの結びつきが強いので、さもありなんだが、親米国のはずのUAEはなぜ棄権したのだろうか。

「安保理」決議は棄権、「総会」での決議には賛成

 UAEの公式見解では、棄権したのはUAEがロシアを支持しているからではない。実際、UAEは全ての国連加盟国の領土保全や主権、独立を支持すると強調している。また、UAEのガルガーシュ大統領外交顧問は、ロシアとウクライナのどちらかの側につくのはさらなる暴力を生むだけだとし、政治的解決に向けて外交と交渉をするよう関係各国に呼びかけることが優先されると述べている。

 建前としてのこうした主張は理解できるが、それが米国や西側諸国との関係を損なう恐れがあることを考えれば、リスクは高いだろう。実はUAEは、3月2日の国連総会ではロシア非難決議に賛成している。これだと安保理のときと立場が矛盾することになる。

 とはいえ、中東諸国の多くはUAEと似たような対応を取っている。米国との関係は重要だが、かといってロシアを怒らせるのもどうか、という感じだ。

 UAEを含むアラブ諸国の多くは近年、中東への関与を低下させている米国に不信感を抱いている。その裏返しとして、ロシアや中国との安全保障・治安関係強化が重要になっていた。実際、UAEは、米国には及ばないものの、ロシアから多くの武器を輸入しており、ロシア軍需産業にとって最も重要な顧客の1つとなっている。

 なお、今回、ロシアの拒否権で否決された安保理決議案には、安保理メンバーではない一般の国連加盟国が署名に加わった。その数は80を超えた。ところが、中東でこの署名に参加したのはわずか2カ国、トルコとクウェートだけであった。

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