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 この第2回投票を前提とすれば、サンダース氏に第1回投票で過半数さえ取らせなければ、バイデン氏は指名を獲得することができるわけです。

 実は、2016年に行われた前回の指名争いでは、特別代議員も第1回投票に参加することができました。この時はヒラリー・クリントン氏とサンダース氏の争いで、クリントン氏が第1回投票で過半数を得て、指名を獲得しました。この時、多くの特別代議員がクリントン氏を支持。これに対してサンダース氏が「(州の予備選・党員集会の意向に縛られることなく)民意を反映していない特別代議員が結果を大きく左右するのはおかしい」と激しく反発しました。「ボス政治」が行われている、というわけですね。これを受けて、今回の指名争いでは、特別代議員は第1回投票には参加できないことになりました。

くら替えの見返りに、政策やポストを提示

 もう少し、民主党の指名争いの仕組みをお話ししましょう。第1回投票に参加する代議員は原則として、州で行われた予備選挙および党員集会での結果に応じて投票します。例えば、2月22日に投開票を終えたネバダ州(代議員数=36)では、バイデン氏が9人、サンダース氏が24人、ピート・ブティジェッジ氏*が3人の代議員を獲得しました。党大会における第1回の投票では、バイデン氏は9票、サンダース氏は24票、ブティジェッジ氏は3票を獲得できるわけです。

*:インディアナ州サウスベンドの市長を務めた

 ブティジェッジ氏は既に撤退を決めています。ブティジェッジ氏を推すと約束した代議員が誰に投票するかは代議員に任されることになります。民主党の規約は、「代議員は、彼ら・彼女らを選んだ人々の気持ちをくんで、良心をもって投票する」と定めるのみです。ブティジェッジ氏はバイデン支持を表明していますが、この3票がバイデン氏に回るとは限りません。

 第1回投票で過半数を獲得する候補が現れない時は、ブローカード・コンベンション(brokered convention)という話し合いが行われます。各候補を推す代議員が、他の候補を推す代議員と話をし、自身が推す候補にくら替えするよう説得する場です。くら替えの見返りは、例えば政策や党の綱領に盛り込む文言、党のポストなどです。「○○の補助金を実現するから、□□候補に投票してくれ」という具合ですね。

 話し合いが前回行われたのは1952年に遡ります。それより以前にはお金も飛んだようです。現在はそのようなことはないかもしれません。

 それぞれの代議員は、第2回投票で誰を推すかは自由です。州の予備選・党員集会の結果に縛られることなく、それぞれの信念に基づいて投票できる。ここでいう信念は“信念”、すなわち、見返りを加味した上でのものです。

特別代議員によるバイデン支持は禍根を残す

 ただし、第2回投票でバイデン氏が勝利した場合、ドナルド・トランプ大統領と争う本選に禍根を残す可能性が大です。サンダース氏は、再び激しく抗議するでしょう。16年の指名争いで批判したボス政治が再演されるわけですから。このためサンダース氏は、指名争いが始まる前からこれを警戒し、「たとえ過半数の票を獲得できなくても、第1回投票で首位となったものが指名されるべきだ」と主張しています。今からルールが変わることはないと思いますが。

 サンダース氏による抗議が激しくなれば、同氏の支持者が本選でバイデン氏に投票しない、もしくは投票そのものに行かない可能性が浮上します。これはトランプ氏に有利な状況を生み出します。

民主党の指名争いが激しくなればトランプ氏が有利になる、といわれています。ここに理由の1つがあるのですね。

前嶋:そうですね。ただし、もっと大きな理由があると考えています。民主党に「熱」がないことです。これまで行われた予備選・党員集会を振り返ると、その投票率が極めて低く、その平均は約24%にとどまります。従来の平均は約30%でした。中でも、民主党だけが予備選・党員集会を開いた州は投票率が低く、バージニア州は21.4%、サウスカロライナ州は13.8%。ネバダ州は4.9%にとどまります。民主党の候補に誰が得るにせよ、この盛り上がりのなさは、トランプ氏に有利に働きます。