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第2回の米朝首脳会談が2月27~28日に行われ、合意文書に署名することなく終了した。朝鮮半島情勢に詳しい武貞秀士・拓殖大学大学院特任教授は、北朝鮮が「パルチザン思想に基づく賭け」に出たことが原因と分析する。一方、日本の外交にとって、北朝鮮との国交正常化に向かうチャンスになる可能性がある、と展望する。

(聞き手 森 永輔)

合意文書への署名なく首脳会談が終了した後、記者会見に臨む北朝鮮の崔善姫(チェ・ソンヒ)外務次官(写真:AFP/アフロ)

第2回の米朝首脳会談が2月27~28日に行われ、合意文書に署名することなく終わりました。会談前に、結果を楽観視する報道が相次いでいたので、驚きました。米CNNは「(米朝首脳が)28日、共同声明に署名する見通しであることがわかった」と報じていました。

武貞:まったく予想外でしたね。28日朝までに、米朝双方が発信していたメッセージを見ていると、共同声明にいくことを示唆していました。ドナルド・トランプ米大統領は会談後「文書は準備が整っており、署名はできた」と語っています。北朝鮮の金正恩委員長も28日午前まで「私の直感では、良い結果が生まれると信じる」と楽観的な見方を示していました。

武貞 秀士(たけさだ・ひでし)氏
拓殖大学大学院特任教授
専門は朝鮮半島の軍事・国際関係論。慶應義塾大学大学院博士課程単位取得退学。韓国延世大学韓国語学堂卒業。防衛省防衛研究所に教官として36年間勤務。2011年、統括研究官を最後に防衛省退職。韓国延世大学国際学部教授を経て現職。著書に『韓国はどれほど日本が嫌いか』(PHP研究所)、『防衛庁教官の北朝鮮深層分析』(KKベストセラーズ)、『恐るべき戦略家・金正日』(PHP研究所)など。

 準備していた合意文書は、朝鮮戦争の終戦宣言と連絡事務所設置を示唆する文言があったとしてもおかしくありません。北朝鮮が求める終戦宣言は米国にとってさほどハードルが高い事項ではありません。米国のスティーブ・ビーガン北朝鮮政策特別代表は1月31日にスタンフォード大学で講演し「トランプ大統領にはこの戦争を終わらせる用意がある」と発言していました。

 連絡事務所も、実質的にその役割を果たすものがかつて存在していました。米国務省のケネス・キノネス北朝鮮担当官(当時)は1992年から97年の間、国務省で核交渉に直接かかわった時期にピョンヤンに滞在しながら北朝鮮と交渉していました。当時はこれを「連絡事務所」とは呼びませんでしたが、実質的にはその役割を果たしていました。

 これら二つの事項を盛り込むことで、昨年6月12日に実施した第1回首脳会談より前進したイメージを作ることができます。