プーチン大統領はウクライナに侵攻することでソ連時代の国威を取り戻す考えだ。しかし、それどころかプーチン政権の終焉(しゅうえん)を招きかねない。脱石油・ガスのための国際的な投資はもう期待できない。NATOは団結を強めた。今後、スウェーデンやフィンランドも加盟を希望するだろう。中国は真の友にはなり得ない。ロシアの国際的孤立に失望する同国民は反発を強める。

世界各地で、ウクライナ侵攻に反対する運動が高まっている(写真:AFP/アフロ)
世界各地で、ウクライナ侵攻に反対する運動が高まっている(写真:AFP/アフロ)

 ロシアが2月24日、ウクライナに侵攻した。この侵攻の主な犠牲者はウクライナだが、ロシア自体も深刻な影響を受けることになる。ロシア経済が打撃を受けるのは言うまでもない。さらに、国際政治や国内政治においても、プーチン政権にとっては大きいデメリットしかない。1979年から1989年まで続いたソ連(当時)のアフガニスタン侵攻は、ソ連が崩壊する一因となった。同様に、ウラジーミル・プーチン大統領のウクライナ侵攻は、同大統領の権威主義的な政権の終焉(しゅうえん)につながる可能性がある。

 プーチン大統領がロシア軍にウクライナ侵攻を命じた際、この「特殊な軍事作戦」は、ウクライナに住むロシア系住民を「ジェノサイド(集団殺害)」から守るために必要だと述べた。同日、ミハイル・ガルージン駐日ロシア大使は、ロシアの軍事行動は国連憲章第51条が定める自衛権に基づくものだと主張した。

 これらは、まったく根拠のない言い分だ。欧州安全保障協力機構(OSCE)のウクライナ特別監視団は2014年から、ウクライナ政府が管理する地域を綿密に監視していた。同特別監視団は今日まで、ジェノサイドどころか、ジェノサイドに近い行動の証拠も一切発見していない。同じように、自衛という主張もあり得ない。ロシアがウクライナを攻撃したのであって、その逆ではないからだ。

 ロシアが侵攻した本当の理由は、ウクライナの独立を終わらせ、ウクライナに対するロシアの支配権を取り戻すことだ。具体的には、ウクライナの現政府を転覆させ、親ロシアの傀儡(かいらい)政権を樹立しようとしている可能性が高い。これは、ソ連崩壊時に失った国威を回復するためプーチン大統領が抱く計画の一部である。

 しかし、この行動は同大統領にとって大きな誤算となる。ロシアを強化するどころか、経済的にはもちろん戦略的にも、はるかに弱体化させることになる。

脱ガス、脱石油のための投資はもう期待できない

 最も明白な悪影響は、経済の分野で見られる。日本を含む主要7カ国(G7)メンバーは、ロシアがクリミア半島を併合した2014年に発動した制裁をはるかに超える制裁を科すと発表した。

 最も重要なのは米国による制裁措置だ。ズベルバンクをはじめとするロシアの大手銀行5行を米国の金融システムから排除する。これらの大手銀行は、ドル取引を行えなくなるため国際的な業務遂行能力が大きく制限されることになる。中でもズベルバンクはロシア最大手の銀行で、同国の銀行セクターの資産の3分の1近くを占める。2月24日に第1弾の制裁が発表されたとき、同行の株価は211ルーブルから112ルーブルへとほぼ50%下落した。

 さらに、侵攻初日の2月24日、ロシアの株式市場は33%(約1890ドル)もの価値を失った。また、ロシア・ルーブルの為替レートは対ドルで89.98ルーブルと、過去最低の水準まで下落した。

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