全8555文字

英船籍のクルーズ船内で新型コロナウイルスの感染が拡大した。日本政府は横浜港への寄港を受け入れ、船内を検疫し、経過観察の措置を進めている。日米関係に詳しい香田洋二・元海上自衛隊自衛艦隊司令官(海将)は、一連の対応が日米関係に負の影響を与える可能性を指摘する。米国は「日本政府の対応を黙って勤務評定している」と言う。

(聞き手 森 永輔)

クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」から、陰性の乗客の下船が進められた(写真:AP/アフロ)

新型コロナウイルスの集団感染が起きたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」からの乗客の下船がおおむね完了しました。しかし、早くも2月22日、下船した乗客の中からウイルス検査で陽性を示す人が現れました。収束に至る以前に、感染がさらに拡大する事態が懸念されます。

 香田さんは、幹部海上自衛官として海上勤務していた時に、護衛艦に乗船している隊員の8割がインフルエンザウイルスに感染する事態に見舞われたそうですね。それを踏まえて、今回の日本政府の対応をどう評価しますか。

香田:お答えする前に1つ話しておきたいことがあります。危機対応が現在進行形で進んでいる今、最もしてはならないのは、その取り組みを批判・批評することです。私たちのように政府の外にいる人間が知ることのない情報の下で、現場は最善の取り組みを懸命にしているはずですから。なので、これから申し上げるのは、その取り組みをさらに良くするための提案と理解してください。また、医学上の取り組みについても、専門家に任せるべきであることは当然です。

香田洋二(こうだ・ようじ)
海上自衛隊で自衛艦隊司令官(海将)を務めた。1949年生まれ。72年に防衛大学校を卒業し、海自に入隊。92年に米海軍大学指揮課程を修了。統合幕僚会議事務局長や佐世保地方総監などを歴任。著書に『賛成・反対を言う前の集団的自衛権入門』など(写真:大槻純一)

 1981年の冬、護衛艦「ゆうだち」の砲雷長として勤務していた時のことです。ゆうだちは、母港である京都・舞鶴で次の航海に出る準備をしていました。そこで、最初の発病者が出てから2週間で、乗艦していた隊員約250人の8割がインフルエンザに感染してしまったのです。護衛艦勤務において最も留意すべきことは感染症と食中毒といわれています。

 この時の経験に照らして考えると、ダイヤモンド・プリンセスの横浜港への寄港を受け入れ、乗客・乗員を船内にとどめる対応は適切だったと思います。

 ゆうだちでは、最初の感染者が現れたと思ったら、あれよあれよという間に10人、20人と増えていきました。護衛艦は機関部と武器の間で人が暮らしているようなものです。護衛艦に限らず船舶に共通の事項として、船体によって外気から遮断された閉鎖空間で多くの乗員が生活するため、換気が必要でファンを絶え間なく回しています。それもあって感染が一気に広がったと思われます。