朝鮮労働党中央委員会総会に出席した金正恩委員長(提供:KNS/KCNA/AFP/アフロ)
朝鮮労働党中央委員会総会に出席した金正恩委員長(提供:KNS/KCNA/AFP/アフロ)

 北朝鮮の国営放送である朝鮮中央通信は英語版で2021年2月12日、前日に旧正月祝賀公演を鑑賞した金正恩(キム・ジョンウン)の政府肩書をPresident of the State Affairs of the Democratic People's Republic of Koreaと報道した。これを日本語に直訳すれば、朝鮮民主主義人民共和国国務大統領である。

 同通信は1月22日、シリア大統領に答電を送ったことに関する報道で、Chairman of the State Affairs Commission of the Democratic People's Republic of Koreaの肩書を使用している。日本語では、よく知られている国務委員会委員長となる。この間に、金正恩の英語での政府肩書が変わったわけだ。

 朝鮮中央通信の英訳には時折誤訳がある。しかし、今回の肩書は誤訳ではない。同通信の英語版は2月17日にも、前日に錦繍山太陽宮殿を訪問した金正恩の肩書をPresident of the State Affairs of the Democratic People's Republic of Koreaと報道した。北朝鮮で、最高指導者である金正恩の肩書を2度も続けて誤訳することは考えられない。

 ただし、政府肩書が変わったのは英語であって、朝鮮語や日本語、中国語は相変わらず国務委員長のままだ。これはどういうことであろうか。実は、ロシア語やスペイン語の肩書も変わったので、その変化から考察してみよう。

政府肩書の正規名称が「国務委員長」になった可能性

 ロシア語は「朝鮮民主主義人民共和国国務委員会委員長(Председатель Госсовета Корейской Народно-Демократической Республики)」から「朝鮮民主主義人民共和国国務委員長(Председатель Государственных дел Корейской Народно-Демократической Республики)」に変わった。

 スペイン語でも「朝鮮民主主義人民共和国国務委員会委員長(Presidente del Comité de Estado de la República Popular Democrática de Corea)」から「朝鮮民主主義人民共和国国務委員長(Presidente de Asuntos Estatales de la República Popular Democrática de Corea)」に変わった。

 スペイン語のPresidenteは委員長とも大統領とも訳せるが、ロシア語のПредседательは大統領とは訳せない。大統領はПрезидентである。

 ロシア語とスペイン語で共通しているのは、「国務委員会」が肩書から外れたことだ。これは英語も同じである。朝鮮語や日本語、中国語では、普段から国務委員会を略して、国務委員長という政府肩書を使っていたから、変化が分からないだけといえる。

 ここで重要なのは肩書の名称が大統領なのか委員長なのかではない。

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