春節の連休明けの北京。日常生活が戻ってきた(写真:AP/アフロ)
春節の連休明けの北京。日常生活が戻ってきた(写真:AP/アフロ)

中国政府が昨年12月に、ゼロコロナ政策を実質的に停止すると、新型コロナウイルス感染が大爆発を起こした。経済に深刻な影響を与えることが予想されていたが、エコノミストたちが誰も予測していなかった急展開が起きた。感染は大爆発を起こしたものの、一気に収束。懸念されていた、春節(旧正月)休暇中の地方での感染拡大も確認されていない。消費の動向を示す指標の値は、落ち込みが緩やかになり、反転し始めた。4月からと見込まれていた本格回復は2月上旬から始まりそうだ。

(聞き手:森 永輔)

瀬口清之キヤノングローバル戦略研究所研究主幹(以下、瀬口氏):今回は、中国の新型コロナ感染が急速に収束し、景気回復が予想外に早まりそうだ、というお話をします。1月21日から始まった春節の7連休の前後に、中国で活動するエコノミストや企業経営者からヒアリングしました。

 前回、「社会不安さえ起きなければ、中国経済は順調に回復する」との見通しを示しました。社会不安とは、春節の連休に、帰省客を媒介として新型コロナウイルス感染が都市から農村に拡大する事態への懸念でした。医療基盤が脆弱な農村で、基礎疾患を抱える高齢者に感染が広がれば医療崩壊となりかねません。けれども、この懸念は杞憂(きゆう)に終わったことがほぼ明らかになりました。都市でも農村でも、2022年12月23日ごろに感染のピークを迎え、今年1月21日ごろには収束したとみられています。

 よって、元宵節が来て旧正月が終われば、2月6日以降、農民工と呼ばれる農村からの出稼ぎ労働者がすべて都市に戻り中国経済は本格的な回復に向かうでしょう。ほんのひと月余り前は「4月から」とみられていました。

陰性の従業員は「出社禁止」のわけ

 22年12月に、主要都市や農村における感染がどのような状況だったのか振り返ってみましょう。まず北京での感染ピークは12月10日から1週間程度だったといわれています。そして12月末には収束しました。12月7日に政府がゼロコロナ政策を実質的に停止して以降、感染が一気に拡大し、その後、一気に収束したことが見て取れます。

 上海や広州などの大都市は北京から1~2週間遅れで同様に事態が進みました。よって、中国全体としては12月23日ごろに感染のピークを迎え、春節休暇が始まる時点でほぼ収束していました。

 感染者の症状は発症して1~2日目は発熱、3~5日目に回復、5~7日目に検査結果が陰性に、と推移するケースが標準。企業は、従業員に抗原検査キットを配布し、陰性が確認できた者は出勤を認めました。なので、休んでも、その期間は1週間弱程度。

 一部の国有企業や政府機関は、陽性であっても微熱であれば出勤するよう指示を出しました。感染者の多くは症状が軽微で業務に大きな支障をもたらすものでなく、かつ、それ以上悪くなることもないと判断したからです。若い人については、重症になる人はほとんどいませんでした。よって、こうしたところに勤める人々は休んでもせいぜい2~3日でした。

 さらに興味深いことに、検査で陰性の者に対し自宅待機するよう促したのです。「ゼロコロナ」が撤回されたのを受けて「ゼロ陰性」にシフトしたわけです。職場において感染者の方が多数派になり、陰性の人が少数派になったことが背景にあります。

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