欧米諸国がウクライナにミサイルやロケットなど武器の供与を進める中、ドイツの支援はヘルメット5000個にとどまる。その背景にあるのは、ロシア産の天然ガスと石油への依存だけではない。ナチス・ドイツ軍がソ連(当時)領土に侵攻し深刻な被害を与えた記憶がある。

独ソ戦において、ナチス・ドイツはソ連(当時)に甚大な被害を与えた(写真:AP/アフロ)
独ソ戦において、ナチス・ドイツはソ連(当時)に甚大な被害を与えた(写真:AP/アフロ)

 ロシアはウクライナ国境に約10万人の兵力を集結させ、北大西洋条約機構(NATO)と米国政府に対し「ウクライナをNATOに加盟させないことを、条約のかたちで保証せよ」と迫っている。ロシアは軍事演習の名目でベラルーシに約3万人の戦闘部隊を送り込み、ウクライナへの圧力を高めつつある。

中東欧の秩序再編を目指すプーチン大統領

 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は2月2日、次の3点を最も重要な要求項目として強調した。

(1)NATOは新しい加盟国を受け入れない。
(2)NATOと米国はロシアに隣接した国に、ミサイルを配備しない。
(3)NATOと米国は、欧州の軍事的な状況を1997年の状態、つまり中東欧諸国のNATO加盟が始まる前の状態に戻す。

 プーチン大統領は、NATOが冷戦終結後に進めてきた東方拡大にブレーキをかけ、欧州の地政学的な状況を再編することを目指している。

 NATOがロシアの虎の尾を踏んだのは、ルーマニアの首都ブカレストで2008年に開いた首脳会議だった。この会議で、欧米諸国はウクライナに対してNATO加盟の可能性を示した。ロシアはこのとき、NATOに対し「ウクライナに示したNATO加盟の可能性」を撤回するよう求めている。プーチン大統領は、「我が国と国境を接する国がNATOに加盟した場合、我が国に対する直接的な脅威とみなす」と警告した。

 NATOと米国は「ウクライナがNATOに加盟するかどうかは同国とNATOが決めることであり、ロシアが口を挟むことは許さない」という態度を取り、プーチン大統領の要求を拒否した。

 プーチン大統領は去る2月4日、北京で開かれた冬季五輪の開会式に出席。中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席から「米国・NATOに対するロシア政府の要求は正当だ。中国政府はロシアを支援する」という援護射撃を受けた。ウクライナ危機によって東アジアにおける米国とNATOの影響力が減れば、米国と対立する中国にとってはプラスとなる。欧米と中ロの対立の構図はますます深まりつつある。

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