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一般教書演説に臨むトランプ大統領(中央)。後方にペンス副大統領(左)とペロシ下院議長(右)が並ぶ(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 米東部時間2月5日午後9時から米ワシントンの連邦議会でドナルド・トランプ大統領の「一般教書演説」がようやく始まった。35日間にわたって行政府の一部が閉鎖となった騒動の煽りで、当初の予定より1週間遅れての開催だ。

 日本時間では6日朝11時。筆者は米コロラド州で講演の約束があるため、夕方には都心を出発しなければならない。今回は成田発デンバー行き直行便の機中でこの原稿を書く羽目になった。

一般教書演説は価値観を共有する“お祭り”

 そもそもなぜこの演説を「一般教書」と呼ぶのかはよく分からない。英語の正式名はState of the Union addressだが、英語の新聞などではSOTUとも略される。米国憲法上、議会に出席する権利を持たない大統領が文書で議会にmessageを送ったのが始まりらしい。直訳すれば「連邦の状態」演説だが、日本では「一般教書」、「年頭教書」などと呼ばれている。

 一般教書演説とは、日本で言えば「所信表明演説」、それ自体世界がひっくり返るようなものではない。だが、誤解を恐れずに言えば、これは「毎年1月下旬に、米国の三権の長が連邦議会に一堂に集まり、大統領の演説を聞き、多様性に富む米連邦の共通の価値観や一体感を皆で共有しようとする」数少ない、一種のお祭りだ。されば、今年のお祭りの結果はどうだったのか。

トランプ氏と民主党の勝負の結果はいかに?

 結論から言えば、下院で野党・民主党が過半数を握る「ねじれ議会」だからか、今年のトランプ氏の一般教書演説は全体として抑制が利き、サプライズも少なかったような気がする。同時に、2020年の米大統領選を見据えているのか、経済成長の実績や低失業率などに言及して自画自賛する場面が目立った。彼にとって、もう大統領選挙は始まっているからなのだろう。

 事前の予想では、トランプ政権の看板政策となるメキシコとの「国境の壁」について、議会の承認を得ずに政府の現行予算から建設費を捻出する「国家非常事態宣言」の発動を宣言するとの見方もあった。だが、そんなことが可能なら、将来、民主党の大統領だって法律を作ることなく、「非常事態宣言」を発布し「銃規制」を強化するだろう。そんな馬鹿な、と誰もが思うはずだ。

 だが米国憲法上、大統領はその裁量の範囲内で合衆国の非常事態を宣言できる。合衆国法典第10編の規定でも、大統領は非常事態の際に、国防総省に割り当てられた使途目的自由予算の範囲内で建設計画を実施することは可能だという。もちろん、同宣言に基づいて大統領が使用した壁建設資金が法的に認められるか否かは別問題だろうが。