国別にみると、米国向けの輸出が大きく増加しました。10~12月期の輸出全体(ドルベース)の伸び率は前年同期比17%増と高い伸びを記録。その中でも米国向けは同34%増と特に高い伸びを示したのです。
それはまた意外です。
瀬口:そうですよね。この理由は2つ挙げられます。1つはクリスマス需要があったこと。もう1つは、生活者向けに支給したコロナ対策の現金給付がモノの消費に向かったことです。米国では依然として深刻なコロナ感染拡大が続いていて大半の人々が外出を控えているので、消費者の需要がサービス消費ではなくモノに向かったわけです。そのいずれもが中国からの輸入品の消費拡大につながりました。
私も外食は控えました。在宅勤務する時間が増えたのでディスプレーを購入しました。
瀬口:同様のことが米国で起こったわけです。さらに、品質に大きな差がなければ、より低価格な中国製品を購入しようということになります。米国政府はトランプ政権の下で中国とのデカップリングを目指して様々な政策を打ち出しました。しかし、米国民は中国依存をやめられない。このことが明らかになったのを示す事実です。これが経済のグローバル化の実態であると理解すべきです。
欧州でも同様の動きが見られました。
外需がGDP成長率の押し上げに貢献した理由の第3は、留学や海外旅行が減少したことです。これによりサービス貿易分野の赤字が減少しました。第4は原油をはじめとする原材料輸入額の減少です。世界的な需要減を受けて原油などの原材料品の価格が低下しました。こうした輸入価格の低下は、中国経済にとって補助金を得たような効果をもたらします。
将来への自信を取り戻し、製造業が投資を再開
消費と外需と並んでGDPの3本柱をなす投資はどのような具合でしたか。
瀬口:投資は堅調で10~12月期の実質GDP成長率への寄与度は2.5%(7~9月期は同2.2%)の伸びでした。コロナの感染拡大を抑え込んだことで、夏場以降、製造業が将来に対する自信を取り戻し、設備投資を再開したのです。
不動産開発投資とインフラ投資の動向はいかがでしたか。
瀬口:不動産開発投資は堅調です。金融政策が基本的に緩和傾向にあることが背景にあります。豊富になった資金が不動産市場に流れ込みました。広東省や上海市の一部地域などで一時的にバブルの様相を呈する地域がありましたが、芽の段階で適切に抑え込んでいます。
不動産価格を抑制する政策手段としては、ミクロとマクロの両方の政策手段を組み合わせています。ミクロ政策では、個別の不動産デベロッパーを金融機関経由で指導するなどの手段を執ります。マクロ政策としては、インターバンク市場の金利を引き上げて調節しました。
インフラ投資の伸びは鈍かったです。これは政府の政策変更が背景にあります。地方政府が量よりも質を重視するようになりました。これまでは、GDPの伸びを拡大させることが地方政府の評価を高める方程式でした。しかし、やみくもなインフラ投資が不良債権を生み出すことが中国政府の頭痛の種でした。このため2017年10月の第19回党大会以降、評価制度が改められました。以前の経済成長率重視の姿勢から経済社会の質向上重視へと、国家としての基本方針の大転換を決定したのです。この決定を受けて、地方政府はインフラ投資案件への審査を厳しくし、いまも緩めようとしません。
この流れを中央政府も後押ししています。経済の先行きに対する不透明感が高まれば、アクセルをふかすよう中央政府が地方政府に指示することも考えられます。しかし、その必要は生じていません。これまでに説明したように、外需、設備投資、不動産開発投資などが成長率押し上げ要因となって経済全体が着実な回復傾向を示している状態にありますので、さらなる景気刺激策としてインフラ投資を拡大させる必要は生じませんでした。
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