アント・グループの上場が突然延期となって以来、渦中の人となったジャック・マー氏(写真:AFP/アフロ)

瀬口:今日は中国のマクロ経済の動向と、アリババ集団およびアント・グループの動向、およびこれに対する中国市民の反応についてお話ししたいと思います。

 中国が2020年10~12月期の実質GDP(国内総生産)成長率を6.5%と発表しました。これは中国にとって、巡航速度に回復したことを意味します。引き続き着実な回復の足取りが示されたと思います。特徴として注目されるのは、消費が予想よりも弱かったことと、外需が予想よりも強かったことです。

 消費の寄与度は7~9月期の1.4%から2.6%に伸びました。しかし、これはエコノミストらの期待をやや下回るものでした。中国の内需(消費と投資の和)はこれまで6%台の半ばを超えるのが当たり前でした。例えば2017年は6.6%、2018年は7.2%という具合です。2019年こそ5.2%にとどまりましたが、これは米中経済摩擦への懸念を背景に民間企業の設備投資が伸び悩んだという特殊要因などによるものです。

 この基準に照らすと、10~12月期の5.1%(消費=2.6%、投資=2.5%)は十分な回復を示したとは言えないものでした。

 外需の寄与度は1.4%です。

意外に伸びた米国向け輸出、デカップリングは不可能

5%台で成長しても内需は期待に届かず。他方、外需が予想以上の貢献というのは意外ですね。新型コロナ危機の拡大で、米国も欧州も日本も、中国の外需に寄与しそうな地域の経済は勢いを失っています。

瀬口 清之(せぐち・きよゆき)
キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹 1982年東京大学経済学部を卒業した後、日本銀行に入行。政策委員会室企画役、米国ランド研究所への派遣を経て、2006年北京事務所長に。2008年に国際局企画役に就任。2009年から現職。(写真:丸毛透)

瀬口:そうですね。ところが、文字通りの“コロナ特需”が発生しました。中国の実質GDP成長率に対する外需の寄与度は2008年以降、マイナスか、せいぜい0.3%程度にとどまっていました。例外的に高い値を示した2015年でも0.6%、2019年でも0.8%どまり。ところが、2020年後半の寄与度は7~9月期が1.3%、10~12月期は1.4%に達しました。1.3%、1.4%というのはこれらに比べて非常に強い数字です。

 理由の第1は、中国が新型コロナウイルスの感染を夏にはほぼ抑え込んだため、製造業の生産ラインが正常に稼働するようになったことです。ここに、外国企業から代替生産の需要が舞い込みました。欧米のあるアパレル企業は、コロナ禍でインド工場の生産が滞ったため、これを一時的に中国に移管しました。自動車部品やプラスチック製品の一部でも同様の動きがみられます。

 第2は、そもそも中国が主に製造していた製品が、“コロナ特需”に沸いたこと。パソコンやスマホなどのIT(情報技術)機器や医療用の防護服などです。

続きを読む 2/5 将来への自信を取り戻し、製造業が投資を再開

この記事はシリーズ「世界展望~プロの目」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。