中国は「有利」とみたら強引に動く

 実際、論理的に考えると、長射程の攻撃能力を保有すれば、防御能力だけで対応するよりも有効に対処できる。中国の強引な進出にはある特徴があるからだ。自らが軍事的に優位と判断したときに、強引に出てくるのである。

 例えば南シナ海における中国の動きはその典型例だ。中国が西沙諸島の半分を占領したのは、1950年代にフランス軍がこの地域から撤退した直後だった。さらに、中国が西沙諸島の残り半分を占領したのは、1970年代に米軍がこの地域から撤退した直後であった。

 中国が南沙諸島に進出したのは、1980年代にソ連軍が地域の兵力を大幅に減らした直後であった。そして中国がミスチーフ礁を占領したのは、1990年代に米軍がフィリピンから撤退した直後のことである。以上の動きから、「軍事的に優位であると自信を持ったときに、強引に進出する」という中国の傾向が読み取れる。逆に言えば、自信がないときは進出してこないのである。

 中国が軍事的な自信を持たないようにするにはどうしたらいいだろうか。中国がどこかを攻撃しようと意図しても、背後に不安があると、自信は持ちにくいだろう。例えば中国が日本を攻撃しようとしていても、「インドに攻撃されるかもしれない」と懸念すれば、自信はつかない。

 それでも中国が日本を攻撃するとすれば、インドからの攻撃に備えて、予算や人員を割いて、防御を固めておく必要がある。

 日本とインドを逆にしても同じことがいえる。つまり、日本、オーストラリア、インド、または他の周辺国がみな長射程の攻撃能力を保有することで、中国の自信を相当減らすことができるかもしれないのである。

 さらに考えを進めると、中国が軍事行動を拡大する際に通過するルートを抑えるのにも、長射程の攻撃能力は有用だ。中国海軍が使う海峡などを、米国、日本、オーストラリア、インドがミサイルで攻撃できるとすれば、中国海軍は、対象となる海峡を通過するのをためらわざるを得ない。

 印中国境においても、中国軍が移動や補給に使用する空港、橋、トンネルなどのインフラに、インドがミサイル攻撃できるならば、中国は自信を持てないだろう。

日本の戦略も、より大きな戦略の一部

 長射程の攻撃能力保有(または敵基地攻撃能力)の議論をするに当たって、日本では、こうしたインド太平洋地域を全体的にとらえた戦略や、その先にある世界の動きについて触れることがほとんどない。しかし、日本の動きは実際には、米国やオーストラリア、インドなどの国々を含めた大きな戦略と関係している。今、軍事大国である中国を前にどうすべきか――。日本の周辺だけに視野を狭めない、戦略的な議論が必要になっている。

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