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 さらに今年3月の総選挙で再選を目指すネタニヤフ首相にとっても、米国の提案書は援護射撃となる。ネタニヤフ首相は、検察庁による汚職捜査のために苦境に立っている。2度にわたる選挙で、連立政権を作ることに失敗したネタニヤフ首相は、ヨルダン川西岸地区やゴラン高原のユダヤ人入植地を正式に併合することで、国内の保守勢力からの得票を増やすことを狙っているのだ。

 トランプ政権はイスラエル政府とパレスチナ自治政府に対し、4年間をかけてこの提案内容について協議するよう勧告している。イスラエルは、4年間にわたり入植地の新規建設を停止しなくてはならない。だがパレスチナ自治政府は、この提案をすでに拒否している。このため米国とイスラエルは、「せっかく我々が準備した和平提案を拒否したのは、パレスチナ側だ」として、相手に責任をなすりつけようとするだろう。

 これまでパレスチナ自治政府はイスラエル及び米国と安全保障に関する協力関係は維持していた。しかしパレスチナ自治政府は2月1日に、トランプ提案に抗議して、この安全保障関連の協力も含めて一切の関係を絶つ方針を明らかにした。

 4年間の交渉期間が経過した後は、イスラエルが一方的に入植地の併合に踏み切る可能性が高い。この場合、ハマスやイスラム聖戦機構は、入植地に対するテロ攻撃を実施するかもしれない。

 トランプ政権が鳴り物入りで打ち出した「和平提案」は、イスラエルとパレスチナの関係を改善させるどころか、この地域をさらに不安定化させる可能性が高い。当分の間、両者の対立は続くだろう。