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アラブの同盟国からも称賛の声は上がらず

 トランプ政権は、この提案が米国寄りのアラブ諸国から称賛されることを期待していた。だが米国の友好国サウジアラビアは、トランプ政権が提案書を公表する式典にワシントン駐在の大使を出席させなかった。同国のサルマン・ビン・アブドルアジーズ・アール・サウード国王はトランプ提案についてコメントすることを避け、「我々はパレスチナ人の権利を守るために努力する」と述べるにとどめた。同国の外務大臣も、米国政府がパレスチナ問題を解決するために努力していることには感謝しながらも、「パレスチナ人の権利は守られなくてはならない」と釘(くぎ)を刺している。

 サルマン国王は、なぜトランプ提案について、支持の姿勢も、批判も明らかにしなかったのだろうか。

 1960年代、70年代に比べると、アラブ諸国にとってパレスチナ問題の重要性は大幅に低下している。パレスチナ解放機構(PLO)の影響力は過去に比べて弱まった。サウジアラビアや湾岸諸国にとって今最大の脅威はイスラエルではなく、イランだ。サウジアラビアなどは、イランの脅威に対抗すべく、イスラエルとの関係を改善する動きさえ見せている。

 しかしサウジアラビアや湾岸諸国は、トランプ提案がパレスチナ人にとっていかに過酷な内容であるかを直ちに理解し、失望したはずだ。パレスチナ人を支援してきた過去の経緯があるため、彼らを完全に見捨てることはできない。サルマン国王がトランプ提案に直接言及するのを避けて、パレスチナ人への支援を約束するコメントを出したのは、そのためである。

 一方トルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領は、「イスラム教徒の聖地であるエルサレムをイスラエルに渡そうとする提案は絶対に受け入れられない。この提案は領土の併合計画であり、死産に終わった」と厳しく批判している。またイランのジャワド・ザリフ外務大臣も「この和平提案は、破産している不動産業者にとっては夢のプロジェクトかもしれないが、世界と中東諸国にとっては悪夢だ」と酷評した。

欧州からは「国際法違反」という批判も

 欧州諸国からもトランプ提案に対して懐疑的な反応が多い。ドイツのハイコ・マース外務大臣は「提案を他のEU加盟国とともに精査する必要があるが、この内容は多くの疑問を投げかける。その疑問とは、パレスチナ人が十分に提案の策定過程に参加しているかどうか、そしてこの提案が国際法の基準を満たしているかどうかだ」と述べた。またフランス外務省も、「パレスチナ問題に関する提案は、国際法に沿ったものでなくてはならない」という声明を発表している。

 EU諸国はこれまで、イスラエルのユダヤ人による入植地建設を批判してきた。そう考えると、国際法を無視して建設された入植地をイスラエルの領土として認めるべきだというトランプ提案は、欧州諸国にとってもとても支持できるものではない。

 ドイツ連邦議会・外交委員会のノルベルト・レットゲン委員長(キリスト教民主同盟)は、「この提案は国際法に違反する内容を含んでいる。イスラエルとパレスチナ人の紛争を解決する基礎にはなり得ず、むしろ問題を増やす。トランプ大統領は、これらの要求をのむようにパレスチナ人に対して最後通牒(つうちょう)を突き付けているかのようだ」と厳しく批判している。