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ユダヤ人入植地の併合を容認

 もう一つ重要なことは、トランプ大統領がヨルダン川西岸にイスラエルのユダヤ人が自主的に建設した入植地を、イスラエル領土として承認すると提案している点だ。トランプ政権は、ヨルダン川西岸地区の約30%をイスラエルの領土、残りをパレスチナ領土とすることを提案した。トランプ大統領は「パレスチナ人の支配地域の面積は、現在の2倍になる」と強調している。

 だがこの提案は、国際法の観点から重大な問題を含んでいる。イスラエルは1967年の六日間戦争(第3次中東戦争)で電撃作戦を実施し、ヨルダン川西岸地区、「嘆きの壁」などを含むエルサレム東部とゴラン高原を占領した。ヨルダン川西岸とエルサレム東部は、1948年の第1次中東戦争以来、ヨルダンが管理していた。国連の安全保障理事会はイスラエルの領土拡張を非難。1967年11月22日に採択した決議第242号で、イスラエルに対して占領した地域から撤退するよう要求した。

 ヨルダン川西岸地区には、ユダヤ人の入植者たちが過去53年間に132の入植地を建設している。ここには約41万人のユダヤ人が住んでいる。またエルサレム東部には約21万人のユダヤ人が住む。国際法の観点から見ると、これらのユダヤ人たちは、ヨルダンが管理していた土地を不法占拠していることになる。入植者たちは、既成事実を作り上げるためにこれらの土地に住宅地や学校などを建設している。

パレスチナ人の移動は厳しく制限

 ヨルダン川西岸地区にはイスラエル軍の前進拠点が設けられており、兵士たちが常に警戒している。さらにイスラエルとパレスチナ人居住区を隔てる壁やイスラエル軍の無数の検問所があるため、パレスチナ人たちの移動の自由は厳しく制限されている。テルアビブとエルサレムを結ぶ高速道路を走ると、ベルリンの壁を思わせる防壁が至る所に造られているのが目に入る。監視塔を持つイスラエル軍の拠点は、鉄条網や、車の突破を防ぐためのコンクリートの障害物で守られている。

 国連や欧州諸国は、イスラエルのユダヤ人による入植地の建設を「国際法に違反する行為」として批判してきた。一方、ネタニヤフ政権は、これらの入植地を「イスラエル領土として併合する」という希望を繰り返し表明してきた。トランプ政権はイスラエル側の主張を認め、提案書の中で「イスラエルは、同国のヨルダン川西岸地区などからの撤退を求める国連決議第242号に法的に拘束されているとは考えない」と断定している。

 つまりトランプ提案はイスラエル政府の希望を全面的に受け入れ、入植地をイスラエル領土として「合法化」しようとしている。1967年にヨルダン川西岸地区を武力によって手中に収めたイスラエルにとっては、「違法状態」が解消されることになる。ネタニヤフ首相が、トランプ提案について「これは1948年のイスラエル建国に匹敵する素晴らしい内容だ」と称賛したのは、そのためだ。

パレスチナは名ばかりの寸断国家に

 イスラエルはテロを防ぐという名目で、今後も壁や検問所を維持すると予想される。したがってパレスチナ人の移動の自由は将来も制限されたままとなり、「国家」は名ばかりのものになる。 

 つまりトランプ構想によると、新しいパレスチナは、内部にイスラエル領土を抱えて、ずたずたに寸断された国家として誕生する。トランプ政権が発表した地図を見ると、新しいパレスチナはまるで散弾銃で撃たれて多数の穴を開けられた人体のように見える。

 これまでパレスチナ自治政府は、ヨルダン川西岸地区とエルサレム東部の全域をパレスチナ国家とし、入植地などに住む約62万人のユダヤ人をイスラエル本土に強制的に移住させることを求めてきた。

 したがってパレスチナ自治政府にとって、イスラエルが国際法に違反して占領しユダヤ人が建設した入植地を、同国の領土として承認することは不可能である。もしアッバス大統領がそのような要求を認めたら、パレスチナの民衆は自治政府に対して蜂起するに違いない。