北朝鮮では2013年以来、毎年1月1日に、最高指導者である金正恩(キム・ジョンウン)が「新年辞」を読み上げ、それをテレビで放送する。金正恩は2019年も「新年辞」を読み上げた。

「新年の辞」を読み上げる金正恩委員長(提供:KNS/KCNA/AFP/アフロ)
「新年の辞」を読み上げる金正恩委員長(提供:KNS/KCNA/AFP/アフロ)

 今回は例年と異なり、椅子に座って語るスタイルを取った。スタイルも斬新であったが、読み上げた内容も斬新で、例年に比べて南北対話や外交に多くを割いた。ただし、これは、ある意味で当然だったかもしれない。昨年は金正恩が首脳会談にデビューした年だったからである。金正恩が「新年辞」を読み上げるスタイルを変えたのも、「新しい自分の時代」を誇示したかったからかもしれない。

 北朝鮮は2018年、首脳会談を8回開催した。内訳は、南北首脳会談が3回、中朝首脳会談が3回、米朝首脳会談が1回、キューバ・北朝鮮首脳会談が1回だ。もちろん、周辺諸国の首脳が開催する首脳会談に比べると、その数は格段に少ない。しかし首脳会談デビューの年である。しかも北朝鮮の首脳である。そんなに数多くの首脳会談を急に開催できるわけはない。

2018年まで首脳会談はしなかった

 金正恩は2019年1月、再び列車で中国を訪問し、7日から10日まで4回目の中朝首脳会談に臨んだ。金正恩は2019年も、首脳会談を続けることになるであろう。首脳会談の回数が去年に比べて多くなるのか少なくなるのかは分からない。しかし、それはあまり重要ではない。そもそも現在の北朝鮮にとって、首脳会談は実際に重要なのであろうか。

 金正恩が首脳会談をすることの意味を考えてみよう。北朝鮮は、前の最高指導者である金正日(キム・ジョンイル)が2011年9月23日にラオスのチュンマリー・サイニャーソン大統領と会談して以来、2018年3月26日の中朝首脳会談まで約7年間、首脳会談を開催しなかった。これは2011年に金正恩が最高指導者になってからも変わらなかった。ちなみに、チュンマリー大統領との首脳会談には、後継者になった金正恩も同席しており、金正恩個人にとっても中朝首脳会談は約7年ぶりの首脳会談である。

 首脳会談が開催されなかった間、北朝鮮が外交をしていなかったわけではない。北朝鮮は159カ国の国交締結国と外交関係を維持している(2018年2月1日にヨルダンが断交したことで159カ国になった)。実権があまりないとはいえ、国家元首である最高人民会議常任委員会委員長の金永南(キム・ヨンナム)は高齢にもかかわらず外国訪問を精力的に続けてきた。つまり首脳会談を開催しなくても、国交締結国との外交は維持できたのである。

 金正恩は、通常の外交において首脳会談は必要ないと認識していたのであろう。ということは、2018年に首脳会談を開催したのは、通常の外交ではなく、別の特別な問題があったからであろう。特別な問題が何かは、首脳会談の相手から推察できる。

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