いまだ音を上げないカタール

 カタールはどうか。サウジとUAE(それにバーレーンとエジプト)が中心になって2017年、テロ支援や内政干渉などを理由に同盟国であるはずのカタールと断交した。経済封鎖も科し、同国をぎりぎりと締め上げている(カタール危機)。しかし、カタールが音を上げる様子はいまだみられない。

 カタールはイランやトルコとの関係を強化するなどしてこの苦境を凌いできた。それどころか、昨年は勝利宣言まで出している。カショギ事件やイエメン戦争での人道危機といったサウジやUAE側の敵失もあり、西側諸国はカタールに同情的な動きを示すようになっている。

 カタールは危機を通じて、国内の経済基盤を強化、周辺国に依存しないシステムを構築し、耐性を強めている。OPEC(石油輸出国機構)脱退は自信を深めた表れだろう。石油より天然ガスに傾注する政策は、経済的合理性もあろうが、OPECで中心的な役割を果たすサウジの言いなりになる気はないという政治的な意図があるとの見方も根強い。

 むろん、サウジやUAEがカタールの勝利を認めるはずはなく、事態は事実上膠着状態だ。2022年に予定されるサッカーのカタール・ワールドカップまで現状が続くとの観測が強い。カタールにとってワールドカップは国家的な行事であり、周辺国の協力も必要であろう。これをきっかけに仲直りというのは大会を盛り上げる意味でも悪くない。

米国はパレスチナ調停案を出すことができるか

 米国の新しい中東和平提案も2019年の注目点だ。同国は中東に位置するわけではないが、中東情勢を大きく左右する。米国はこの提案を「出す出す」と言いながら、依然として出していない。

 ただ、湾岸諸国を中心にイスラエルとの関係を構築する動きが活発になっている。両地域の外交関係樹立や、そこまでいかずとも通商関係樹立といったことが具体化すれば、中東に大きな地殻変動が起きる可能性がある。ただし、昨年、米国が大使館をエルサレムに移転したことを受け、各地で大きな反対運動が発生した。これから分かるとおり、この問題はきわめてセンシティブであり、そう簡単に達成できることではない。

 昨年末にはオーストラリアもエルサレムをイスラエルの首都と正式に認めた。同国ではこれまでもジハード主義系テロが発生しており、エルサレム問題が加われば、さらなる攪乱要因となる。

 最後に、数少ない明るい話題を。今年は日本・イラク国交樹立80周年に当たる。ただ、残念なことに、今のところ日本国内ではまったく盛り上がっていない。

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