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 2019年の中東の行方を展望する。

 域内諸国の対立が激化したりして、情勢が安定を欠くようになれば、石油の安定供給を妨げることになりかねない。イラク・イランを含む湾岸産油国に石油輸入を依存する日本にとって、この地域の情勢エネルギー安全保障上、死活的な重要性をもつ。米国の対イラン制裁再開、サウジアラビア・UAE(アラブ首長国連邦)とカタールの対立などけっして他人事ではないのである。

 直近で注目すべきは、米軍のシリア撤退だ。

シリアのアサド大統領(右)と同政権を支援するロシアのプーチン大統領(写真:ロイター/アフロ)

アサド政権の存続を見越した動きが加速

 シリアでは、過激派組織「イスラム国(IS)」が2017年にシリア国内の拠点を失って以降も混乱が続いている。さらに、米国のドナルド・トランプ大統領が米軍撤退を宣言したため、情勢が大きく変化する可能性が出てきた。

 これが良い方向に進むのか、悪い方向に進むのかは微妙である。中途半端なかたちで米軍がシリアから引けば、イラクの二の舞になりかねないという見立てがある。米軍は同国から2011年に撤退。それが結果的にイラクでのテロ活動を復活させ、さらにISを生んでしまったというわけだ。

 また、米軍の撤退により、シリア北部を押さえるクルド勢力が、トルコからの軍事圧力に直に晒されることになる。米軍は、シリアでIS打倒の中核を担ったクルド人部隊を支援してきた。そのクルドを、トルコはテロリストとして敵視している。

 実際、トルコは南下の下心を隠そうとしていない。クルド側は、トランプ大統領が撤退宣言をする以前からトルコの動きを見越したのか、敵対していたアサド政権と手を結ぶ戦略に出ていた。これが続けば、アサド政権を支援するイランやロシアは労せずして、シリアの大半の地域に影響力を拡大できることになる。

 米国政府は、いくら何でもこれはまずいと見たのか、軌道修正に躍起になっているようだ。しかし、アサド政権の勝利は近いという見方がますます有力になっている。反アサド勢力を支援してきた湾岸諸国でも、アサド政権存続を見越した動きが加速しつつあるからだ。UAEは、在ダマスカス大使館を再開すると発表した。クウェートなども後に続くと思われる。サウジも大使館を再開させるとの噂が出た(サウジはこれを公式に否定している)。