内政は外交を変える
少し脇道にそれるが、日本外交も、国内政治社会の変動を受けて変化してきた。いわゆる「55年体制」の崩壊が、そのきっかけとなった。1955年に自由民主党が成立し、その後、自民党が政権を取り続けた。その結果、政治、政府、経済の一体化、つまり政治家、官僚、財界の相互依存と互助の体制が確立した。これは1993年に自民党が政権を明け渡すまで続いた。
この間に確立されたのが、いわゆる吉田外交と呼ばれる親米・経済重視(軽武装)外交に、歴史認識に代表される近隣諸国への配慮を加味した外交路線であった。
「55年体制」の崩壊は、外交に自由な発想の空間を与えた。1996年に発足した橋本龍太郎内閣は、米ソ対立による冷戦を前提として1978年に策定した「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)を、冷戦終結による環境変化と周辺事態への対応を盛り込んだものに改定した。
1998年の小渕恵三内閣の登場とともに、「55年体制」の復活が公然と口にされるようになった。しかし、元には戻らなかった。安全保障はもっと重視されるべきであり、近隣諸国との関係も是々非々で臨むべし、という社会の空気の転換は始まっていた。
2001年の小泉純一郎政権の登場により、外交の流れが一気に変わった。小泉首相は靖国参拝を続けることで、従来の外交路線の一部を壊し、安全保障をより重視する対外姿勢に転換した。日本外交が抱えていた、いわゆるいくつかのタブーを修正したのだ。
日本が経験したのと同じように、米国においても内政の変化は外交方針に大きな影響を与えることになる。これを覚悟しておく必要がある。
固定観念を打破したトランプ外交
第2に、ハチャメチャに見えるトランプ流のやり方にも良い点があることを指摘せざるを得ない。それは固定観念の打破、だ。冒頭に、筆者自身が大きな衝撃を受けたと書いた。正確には、筆者が持っていた固定観念が打破されたということである。
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3/14、4/5ウェビナー開催 「中国、技術覇権の行方」(全2回シリーズ)

米中対立が深刻化する一方で、中国は先端技術の獲得にあくなき執念を燃やしています。日経ビジネスLIVEでは中国のEVと半導体の動向を深掘りするため、2人の専門家を講師に招いたウェビナーシリーズ「中国、技術覇権の行方」(全2回)を開催します。
3月14日(火)19時からの第1回のテーマは、「特許分析であぶり出す中国EV勢の脅威」です。知財ランドスケープCEOの山内明氏が登壇し、「特許分析であぶり出す中国EV勢の脅威」をテーマに講演いただきます。
4月5日(水)19時からの第2回のテーマは、「深刻化する米中半導体対立、日本企業へのインパクト」です。講師は英調査会社英オムディア(インフォーマインテリジェンス)でシニアコンサルティングディレクターを務める南川明氏です。
各ウェビナーでは視聴者の皆様からの質問をお受けし、モデレーターも交えて議論を深めていきます。ぜひ、ご参加ください。
■開催日:3月14日(火)19:00~20:00(予定)
■テーマ:「特許分析であぶり出す中国EV勢の脅威」
■講師:知財ランドスケープCEO 山内明氏
■モデレーター:日経ビジネス記者 薬文江
■第2回開催日:4月5日(水)19:00~20:00(予定)
■テーマ:「深刻化する米中半導体対立、日本企業へのインパクト」
■講師:英オムディア(インフォーマインテリジェンス)、シニアコンサルティングディレクター 南川明氏
■モデレーター:日経ビジネス上海支局長 佐伯真也
■会場:Zoomを使ったオンラインセミナー(原則ライブ配信)
■主催:日経ビジネス
■受講料:日経ビジネス電子版の有料会員のみ無料となります(いずれも事前登録制、先着順)。視聴希望でまだ有料会員でない方は、会員登録をした上で、参加をお申し込みください(月額2500円、初月無料)
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