トランプ大統領(左)と習近平国家主席。中国はトランプ流の仕事の仕方に戸惑ったにちがいない(写真:AFP/アフロ)

 4年前、ドナルド・トランプ大統領が登場したときは、事もあろうに、こういう人物が、あのアメリカ合衆国の元首、政府の長、軍の最高司令官となったこと自体に違和感を覚えた。同大統領がその後にとった言動もショックの連続であった。自らが持つ米国に関する“常識”、ひいては外交に関する“常識”が、これでもかというほど徹底的にひっくり返された。外交の世界に長い間身を置き、日本外交の最重要国として米国を学び続けてきた著者にとって、この衝撃はとりわけ大きかった。

 4年を過ぎて振り返ってみると、そこにいくつか学ぶべきものが浮かび上がってくる。

 1つは、トランプ政権の底流で進んでいた米国社会の変貌を赤裸々に見せつけられたことである。もう一度、目を見開いて米国を眺め、心の準備をする必要があることを痛感した。

 米国に大きな変化が起こったことは何度もある。東京大学教授の久保文明氏と、朝日新聞記者・金成隆一氏の共著『アメリカ大統領選』は、米国では2大政党が自然に定着したが、その政党政治が大きく変貌する契機となる大統領選挙があったことを記している。1800年、1828年、1860年、1896年、1932年の選挙が「決定的選挙」であった。トランプ政権が1期で終わり、バイデン政権が登場することで、トランプ大統領を生み出した2016年の選挙が「決定的選挙」となるかどうかは今後の研究を待つ必要がある。だが、米国社会において進行中の大きな変化が表出した歴史的選挙であったことは間違いない。

 米国社会の変化は、社会の分断という形をとる。今回、その尋常ならざる大きさと深さに世界は驚愕(きょうがく)した。米国社会は常に分断されていたが、先頭に立ってその分断をあおった大統領はトランプ大統領以前にはいなかった。

 しかも、同氏のような大統領を支持する大きな塊が米国社会に存在することが浮き彫りになった。米国は、今後も超大国であり続ける。このように深刻な社会の分断を乗り越えながら、米国が国際社会においてどのような役割を演じるのか、我々にとって極めて重大なテーマであり続ける。同時に、そういう米国を支え誘導することも、これからの日本外交の重要な課題となる。

続きを読む 2/3 固定観念を打破したトランプ外交

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り2981文字 / 全文4725文字

日経ビジネス電子版有料会員になると…

人気コラムなどすべてのコンテンツが読み放題

オリジナル動画が見放題、ウェビナー参加し放題

日経ビジネス最新号、9年分のバックナンバーが読み放題

この記事はシリーズ「世界展望~プロの目」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。