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中東に派遣されることが決まった、海上自衛隊の護衛艦「たかなみ」(写真:アフロ)

米国とイランの間で、軍事力を伴う激しい応酬がありました。米国が1月3日、イラン革命防衛隊「コッズ部隊」のカセム・ソレイマニ司令官を殺害。これに対しイランは1月8日、イラク国内の米軍基地を弾道ミサイルで攻撃し、報復しました。米軍がさらなる報復をするのか、に世界中が注目する中、ドナルド・トランプ米大統領は同日、「軍事力は使いたくない」と発言し、さらなる報復はしないことを示唆しました。

 一連の動きを受けて、日本の野党から「自衛隊の中東への派遣を見直すべきだ」との意見が相次ぎました。「現在の中東地域は戦争前夜に近い状況にある。(中東への自衛隊派遣を)閣議決定した当時に比べ事態が悪化し、前提が変わった。派遣を見直すべきだ」。香田さんは、この主張をどう見ますか。

香田洋二(こうだ・ようじ)
海上自衛隊で自衛艦隊司令官(海将)を務めた。1949年生まれ。72年に防衛大学校を卒業し、海自に入隊。92年に米海軍大学指揮課程を修了。統合幕僚会議事務局長や佐世保地方総監などを歴任。著書に『賛成・反対を言う前の集団的自衛権入門』など。(写真:大槻純一)

香田:何ともおかしな主張だと考えます。事態が悪化したからこそ、自衛隊を派遣すべきではないでしょうか。それに必要な情報を収集する活動がまず必要です。

 この問題を考えるに当たって最も優先して考えるべきは、日本人の生命と財産を守ることです。そして、日本関係船舶の航行の安全を確保する。日本は、最大のエネルギー源である石油の9割弱を中東に依存、そのほとんどをホルムズ海峡経由で運んでいます。日本関係船舶を守ることは日本経済を守ることに直結する。その重要性に議論の余地はないでしょう。

 このことが我が国政府の最も重要な責務となることにも論議の余地はないはずです。日本政府以外に日本人と日本関係船舶を守れる存在はありません。そして、この役割を担える組織は自衛隊しかないのです。自分のことは自分で守るのが世界の常識です。そして、日本人と日本関係船舶を守るべくの正しい判断をするためには、まず自前の情報を得ることが最も重要となります。

 野党が主張するように自衛隊の中東派遣を見直し、「派遣しない」とするなら、これは日本人および日本関係船舶を日本政府が「守らない」ことになると言えます。派遣に反対する野党の主張は、我が国の船員と船舶の安全確保のために判断の基礎となる情報収集を行わない、つまり、我が国の船員や船舶を自国で守らないということを理解しているのかはなはだ疑問です。