天津で、新型コロナウイルス感染症の大規模なテストが始まった。それに並ぶ住民と周囲に消毒剤をまく担当者(写真:AP/アフロ)
天津で、新型コロナウイルス感染症の大規模なテストが始まった。それに並ぶ住民と周囲に消毒剤をまく担当者(写真:AP/アフロ)

2022年の中国経済を展望する。GDP成長率は5%を割り込むこともありそうだ。中国政府は雇用の安定が続く限り成長率にはこだわらず、極端なてこ入れはしない。その経済情勢は、日本の高度成長末期と重なる点が多い。中国経済に詳しい瀬口清之キヤノングローバル戦略研究所研究主幹に聞いた。

(聞き手:森 永輔)

キヤノングローバル戦略研究所の瀬口清之研究主幹(以下、瀬口):今回は2022年の中国経済を展望したいと思います。中国政府は2021年12月8~10日に中央経済工作会議を開きました。ここで打ち出した方針に沿って2022年の経済を運営していくことになります。

中央経済工作会議の発表をどう評価しますか。

瀬口:一言でいうと、従来通りのマクロ経済調整と構造改革を進めていくとの方針を示しました。これまで進めてきた経済政策の成功に対する自信の表れと言えます。

<span class="fontBold">瀬口 清之(せぐち・きよゆき)</span><br />キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹 1982年東京大学経済学部を卒業した後、日本銀行に入行。政策委員会室企画役、米国ランド研究所への派遣を経て、2006年北京事務所長に。2008年に国際局企画役に就任。2009年から現職。(写真:加藤 康、以下同)
瀬口 清之(せぐち・きよゆき)
キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹 1982年東京大学経済学部を卒業した後、日本銀行に入行。政策委員会室企画役、米国ランド研究所への派遣を経て、2006年北京事務所長に。2008年に国際局企画役に就任。2009年から現職。(写真:加藤 康、以下同)

現状に自信示す、「安定を保持できればよい」

 中国経済はさまざまなリスクを抱えています。新型コロナウイルス感染症のまん延、不動産大手・恒大集団の債務危機に代表される不動産市場の低迷、半導体不足、石炭の不足と価格高騰に伴う電力不足――。米中摩擦も解消する見込みは立っていません。以前の中国政府であれば、強い景気刺激策を取る局面ですが、そうした動きはみられません。

 今年のマクロ経済政策運営について「穏中求進」を大方針に据えました。「安定の中に前進を求める」という意味です。つまり安定を重視する。「現在の経済のファンダメンタルズならば景気を無理に押し上げる必要はない」「経済ファンダメンタルズは安定しており簡単には崩れない」との考えが表れています。

 中国政府は先行き景気拡大を展望するときは「求進」ではなく「向好」(より良い方向に向かう)という表現を使います。現在は「向好」する展望は持っていない、つまり安定を保持できればよいと考えているのです。

 この自信の根拠は雇用の安定にあります。有効求人倍率は20年の10~12月期以来1.5~1.6の高水準を保っています。直近2021年7~9月期の値は1.53でした。

1.53というのは、1.15程度で推移している日本に比べて高い値ですね。人手不足ということはないですか。

瀬口:一時は人手不足が深刻でした。新型コロナ危機のため国内移動が厳しく制限され、労働者が農村から都市に出ることができなかったからです。しかし今は全体として労働需給はタイトではありますが、工場が減産を余儀なくされるような極端な人手不足問題は解消しています。人の移動制限が緩んだ時期に、労働者の都市への移動が完了しました。2020年後半から輸出の好調が続いているのは、移動が完了し、企業が安定した生産を実現していることの表れと言えます。

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