フランスは電力の約70%を原子力に依存している(写真:ロイター/アフロ)
フランスは電力の約70%を原子力に依存している(写真:ロイター/アフロ)

欧州連合(EU)は、原子力発電を地球温暖化の緩和に貢献するエネルギーとして認定する方針を明らかにした。脱原子力発電を進めるドイツはEU提案を強く批判。エネルギー政策をめぐる不協和音が生じている。

 論争に火をつけたのは、EUの行政機関である欧州委員会が2021年12月31日の深夜、加盟国政府に送った1通の文書だった。

 EUは2016年以来、民間投資家のために、気候変動の緩和に貢献する経済活動の分類リスト(タクソノミー)を作成するプロジェクトを続けている。2050年までにカーボンニュートラルを達成するために、二酸化炭素(CO2)の排出量がゼロもしくは少ない企業や事業への投資を加速することが目的だ。投資家の間で「グリーン投資のための基準を明確にするためのリストが必要だ」という要望が強まっていた。

 例えば風力発電のためのブレードの製造、太陽光発電パネルの設置、電気自動車の充電インフラの運営などの事業はタクソノミーに記載される。他方、褐炭・石炭の採掘やこれらを燃料として使う発電事業などは、タクソノミーから除外される。

 EUは、大みそかの晩、加盟国政府に送った提案書の中で、「原子力発電と天然ガス火力発電について、一定の条件を満たせば、気候変動に歯止めをかけることに貢献し、持続可能性のあるグリーン事業として、タクソノミーに記載する」との方針を打ち出した。

EUは「原子力発電への投資は持続可能性あり」と認定へ

 EUは提案書の中で、今後新設する原子力発電所について(1)最新の技術を使用する、(2)2045年までに建設許可を取得する、(3)2050年までに高レベル放射性廃棄物の処理計画を提出するという3つの条件を満たした場合、グリーン事業と認定しタクソノミーに記載するとした。

 また2030年12月31日以降に建設を許可する天然ガス火力発電所については、(1)発電量1キロワット時あたりのCO2の排出量を100グラム以下にする、(3)2035年までに燃料を天然ガスからグリーン水素(再生可能エネルギーを使って製造する水素)に切り替えるとの条件を満たせば、タクソノミーに記載する。

 EUは加盟国政府に対し、この提案へのコメントを1月12日までに提出するよう求めている。1月18日には表決によって記載の是非を決める方針だ。

 銀行や保険会社などの機関投資家は、地球温暖化の抑制に貢献するグリーン事業に資金を投入することを重視している。環境投資を重視する投資家や環境保護団体に監視されており、グリーンではない事業に投資すると、自社への投資を減らされてしまう危険があるからだ。EUは、タクソノミーという指針を公表することによって再生可能エネルギーの拡大などのグリーン事業に、投資が集まりやすくすることを狙っている。

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