新型コロナ感染が急拡大し、病院の救急部門のロビーまで患者であふれている(写真:ロイター)
新型コロナ感染が急拡大し、病院の救急部門のロビーまで患者であふれている(写真:ロイター)

中国経済の現状を分析し、2023年を展望する。足元の状況は、天安門事件後の経済の苦境に等しいと形容される。しかし、ゼロコロナ政策終了後の感染拡大は春には収束。その後は回復が期待できる。国内でイノベーションを起こし、実効ある内需を拡大する――。経済における“中国の夢”を引き続き追い求める。欧米経済が停滞する中、中国経済が再び世界のアンカーになる可能性がある。瀬口清之キヤノングローバル戦略研究所研究主幹に聞いた。(聞き手:森 永輔)

23年最初となる今回は、中国経済の展望についてお伺いします。

瀬口清之キヤノングローバル戦略研究所研究主幹(以下、瀬口氏):中国経済の足元の動向と、中国政府が22年12月に行った中央経済工作会議の報告書について説明しましょう。同会議は、中国の共産党と政府が毎年12月に集まり、翌年の経済運営の目標を議論するものです。

瀬口 清之(せぐち・きよゆき)
瀬口 清之(せぐち・きよゆき)
キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹 1982年東京大学経済学部を卒業した後、日本銀行に入行。政策委員会室企画役、米国ランド研究所への派遣を経て、2006年北京事務所長に。2008年に国際局企画役に就任。2009年から現職。(写真:加藤 康、以下同)

 まず足元の経済についてお話しします。今は「(体感では)1990年以来32年ぶり」と形容されるほど厳しい状況です。2022年9~11月の経済指標の値を紹介しましょう。工業生産の伸びは9月の前年同月比6.3%から、10月同5.0%、11月同2.2%と月を追うごとに低下しています。輸出は9月が同10.7%、10月が同7.0%。11月は同0.9%とかろうじてプラスの値を維持しました。

 需要側に目を移すと、消費は9月同2.5%、10月同-0.5%、11月同-5.9%。10月以降、マイナスの値を記録しています。投資は9月同5.9%、10月同5.8%、11月同5.3%。一見したところ緩やかな低下のように見えますが、これは1月からそれぞれの月までの累計の値だからです。投資の中でも不動産投資は9月同-8.0%、10月同-8.8%、11月同-9.8%。累計値であるにもかかわらずどんどん低下しており非常に深刻な停滞に陥っています。

 こうした経済状況は企業の景況感に暗い影を落としています。中国国家統計局が発表する製造業購買担当者景気指数(PMI)は9月50.1、10月49.2、11月48.0と推移。10月以降、中立の水準である50を下回っており、マインドが悪化していることが分かります。

 22年12月に入った後に新型コロナウイルスの感染が急拡大した影響で、それぞれの指標の12月の値はさらに悪化するのが確実です。中国政府は12月、ゼロコロナ政策を事実上終了させました。よって、22年通期の成長率は3%を割り込む可能性が高いとみられます。

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