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19年12月に開かれた中央経済工作会議で発言する習近平国家主席(写真:新華社/アフロ)

2020年の中国経済を見るに当たって、注目点はどこでしょう。

瀬口:20年、中国経済は19年より落ち着いた状態で、1~3月期を迎えたと思います。

 明るい展望と暗い展望が、それぞれ複数挙げられます。まずは明るい展望から。その第1は、米中の貿易協議が第1弾の手打ちに至ったこと*。
*:1月15日に署名される予定

瀬口 清之(せぐち・きよゆき)
キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹 1982年東京大学経済学部を卒業した後、日本銀行に入行。政策委員会室企画役、米国ランド研究所への派遣を経て、2006年北京事務所長に。2008年に国際局企画役に就任。2009年から現職。(写真:丸毛透)

 19年を振り返ると、輸出は終始、先行きが不透明な中で展開しました。米国が課す制裁関税への懸念から、18年に“駆け込み輸出”が拡大。19年の1~3月期はこの反動が予想されました。19年春には、米中貿易摩擦の鎮静化を予想する楽観論が広がったものの5月に決裂。9月には制裁関税の第4弾が発動され、状況が悪化。輸出の先行きの不透明感が、民間設備投資の勢いをそぐ状況が続きました。20年は、当面の間、こうした心配がある程度緩和する見通しです。

 明るい展望の第2は、シリコンサイクルの回復です。18年の10~12月期から下降局面に入ったものが、19年10~12月期に底を打ったと見られています。これが20年の設備投資を押し上げる要因になります。

 第3は自動車販売の改善が見込まれることです。17年末に自動車減税が終了したことから、自動車販売は18年と19年前半、反動減に苦しみました。20年は、「力強い回復」というわけにはいきませんが、19年前半までのような2ケタの伸び率減少はないでしょう。

3つの暗い展望

暗い展望はどんなものですか。

瀬口:こちらも3つあります。第1は、純輸出(輸出から輸入を引いたもの)がマイナスの影響をもたらすことです。19年は輸入が鈍化したことから、純輸出の額が大きくなり、GDP(国内総生産)の成長に寄与しました。しかし、中国の国内需要は安定しており、輸入の失速は長く続くものではありません。20年の輸入は、伸び率が徐々に回復し、純輸出の寄与度を押し下げると見ています。

 第2は減税によるカンフル剤効果が消えること。中国政府は19年の成長率が6%割れする事態を恐れて、18年10月と19年1月に所得税減税を実施しました。20年はこの押し上げ効果がなくなります。

 第3は、自動車産業で淘汰が起きる可能性があることです。先ほど、明るい展望でお話ししたように、自動車産業全体で見ると19年よりはましな状態になると思います。しかし、電気自動車(EV)を対象とする補助金がなくなることが“ダメ押し”となり、競争力で劣る地方の中小自動車メーカーで倒産が拡大する恐れがあります。自動車産業は裾野が広いので、この影響が産業全体に広がるかもしれません。ひょっとすると、そのインパクトは非常に大きなものになる。