他方、米国は、金正恩さえ承認すれば全て解決するという妄想を捨てたであろうか。米大統領であるトランプは、19年12月31日に金正恩との関係は良いと強調して、「彼は約束を守る男だ」と語った。その翌日に発表された党中央委員会第7期第5次総会についての報道は、その期待を裏切るものであった。ただし、トランプは20年1月5日には「彼が私との約束を破るとは思わないが、破るかもしれない」と語っている。朝鮮労働党の方針転換は金正恩の変心だと理解したいようだ。金正恩と北朝鮮を分離して考えることはないようである。

かつての「米帝」は「米国」に変わった

 また北朝鮮では、この2年間で、米国に対する見方を「米帝」から「米国」に変えていった。朝鮮戦争や第2次世界大戦時の米国は今でも「米帝」であるが、現代の米国は「米帝」ではなく「米国」である。現代の米国のことを「米帝」と呼ぶタイトルを冠した論説は、18年2月26日に『労働新聞』に掲載された「米帝は朝鮮人民の血にぬれた不倶戴天の敵」が最後になった。その後も、論説の文章中に「米帝」という表現が入っていることはあったが、誤植のようなものもあり、かなり頻度が少なくなった。

 「米帝」と「米国」の使い分けは、次のようになる。マルクス以来の階級闘争の概念により、「米帝」は階級(人民)の敵であって協調できず、打倒しなければならない相手である。一方、「米国」は民族の敵であるものの、協調も可能になる。同時に、「米国」は以前の「米帝」のように強大な存在ではなく、対等な存在となる。核兵器を持った北朝鮮は、「米国」と対等な存在となり、協調も可能になったので、米朝会談も可能になったと考えたのであろう。党中央委員会第7期第5次総会でも終始一貫、「米国」で通していた。もはや「米帝」ではないのである。

 したがって、米朝会談が別の形で再び始まることも可能ということになる。 (敬称略)

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