
2020年1月1日からは、北朝鮮による核実験と大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射実験が再び始まることが予想される。北朝鮮の報道によると、19年12月28~31日に開催された朝鮮労働党中央委員会第7期第5次総会で、核実験とICBM発射実験のモラトリアムをやめると決定したからである。
核実験とICBM発射実験のモラトリアムは、第1回米朝首脳会談の前である18年4月20日に開催された朝鮮労働党中央委員会第7期第3次総会で決定された事項の一つ。「18年4月21日から核実験と大陸間弾道ロケット試射を中止する。核実験の中止を透明性あるものであると裏付けるために、朝鮮の北部核実験場を廃棄する」とした。これを北朝鮮では「重大措置」と呼んでいた。この「重大措置」をやめたのである。
なぜ、この重大措置を19年12月末にやめたのか。それは、金正恩(キム・ジョンウン)が19年4月13日、最高人民会議第14期第1次会議で行った施政演説で、「ともかく今年の末までは忍耐強く米国の勇断を待つつもりです」と語ったことに由来する。朝鮮労働党委員長として公の場で金正恩が語ったのだから、朝鮮労働党内であらかじめ協議された事項であったと考えられる。この3日前である4月10日に開催された朝鮮労働党中央委員会第7期第4回総会で決まったのであろう。金正恩がこの場で「米朝首脳会談の基本趣旨と党の立場について」明らかにしたことが発表されているからである。
クリスマス・プレゼントなんて、もともとなかった
19年12月に入ると北朝鮮の高官たちが次々と、年末の期限が近づいていると警告する声明や談話を発表した。しかし、米国が真剣に対処しようとした形跡はない。
ただし、北朝鮮のジョークを米国が真に受けたことはある。北朝鮮の外務次官であるリ・テソンが12月3日の談話で、ジョークを込めて「今残ったのは米国の選択であり、迫るクリスマスのプレゼントとして何を選ぶかはすべて米国の決心次第である」と語った。この言葉だけを真に受けて、クリスマス期間に弾道ミサイルの発射実験を警戒する動きまであった。外務次官に弾道ミサイルの発射を決める権限などカケラもないにもかかわらず、である。
金正恩は年末まで待つと言っていたのだから、本当にクリスマスにICBMを発射すれば、朝鮮労働党の方針に逆らうことになる。実際に、「重大措置をやめる」との方針転換を最終的に決定する党中央委員会第7期第5次総会は年末に開催された。朝鮮労働党中央委員会政治局常務委員会は12月4日、党中央委員会第7期第5次総会を12月下旬に開催すると予告していた。
第5次総会に先立つ12月22日には、朝鮮労働党中央軍事委員会拡大会議が開催されたことが発表された。党中央軍事委員会は、軍隊ではなく、党中央委員会の中の会議体である。これを開催した目的は明らかに、党中央委員会第7期第5次総会の準備だ。
これらは、党中央委員会第7期第5次総会で正式に決定するまで、軍隊はおろか、金正恩でさえも勝手に動けず、核実験やICBM発射実験は不可能であったことを意味する。クリスマス・プレゼントにICBMというのは、もともとあり得ない話だったのである。
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