・イランは報復するか

 識者の意見は割れている。正規戦でイランは米軍の敵ではない。もし筆者がイランの最高指導者であれば、非正規戦や非対称戦で米国に報復するだろう。より重要なことは今両国が戦っているのは軍事戦ではなく、政治戦争だということ。イランの戦略目的は、対米戦勝利ではなく、イラクなど中東地域からの米軍撤退と米影響力の低下であり、これなら勝ち取れる可能性が十分ある。

 さらに、筆者ならソレイマニ司令官の死を内政で最大限活用する。経済制裁で疲弊し、民衆の不満が高まっているイランの政府に今必要なのは、共通の敵に対する国民の団結であるはずだ。

・日本は何をすべきか

 仮に米イラン両国が政治戦争にとどめる意向であったとしても、双方による誤算の連鎖が本格的な直接戦争を引き起こす可能性はゼロではない。原油輸入の9割を依存する湾岸地域の安定のため、日本は中東政策を見直す必要もある。

 さらに気になるのは中国や北朝鮮との関係である。習近平(シー・ジンピン)国家主席はイランを支援しつつ、イラン核問題を米中貿易戦争での交渉材料の一つと考えるのだろうか。また、米国の対イラン対応を横目に金正恩(キム・ジョンウン)委員長は何を思うのだろう。対米冒険主義を見直そうとするか、逆に今こそ米国に挑戦すべきだと考えるのか。

 いずれにせよ、新年早々から国際ゲームのルールが変わりつつある。「勢いと偶然と判断ミス」による誤判断が支配する世界が始まり、従来の常識は非常識になっていく。交渉と理性に代わって、腕力と情緒が優先される時代が始まったようだ。日本には何が起きてもパニックにならない度量が必要だろう。

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