中国とロシアの首脳は2021年末、オンラインで会談し「両軍関係の新たなレベルへの格上げ」を明らかにした(写真:新華社/アフロ)
中国とロシアの首脳は2021年末、オンラインで会談し「両軍関係の新たなレベルへの格上げ」を明らかにした(写真:新華社/アフロ)

 欧州では2016~17年にかけて、移民増大への反発を背景に、英国が欧州連合(EU)離脱を選択。多くの国でナショナリスティックな極右政党が躍進した。米国ではドナルド・トランプ政権が登場。世界は反グローバリズム、自国第1の風潮に満ちた。

 ロシアでは2018年、ウラジーミル・プーチン大統領が再選。中国では、国家主席の3選を禁ずる憲法が改正され、習近平(シー・ジンピン)政権の3期目が視野に入ってきた。ルールに基づく国際協調と自由貿易を基調とするリベラルな現行国際秩序に対する危機感が強まった。

この5年の間に見えてきた3つのこと

 これらの動きからほぼ5年が経過して見えてきたことが3つある。第1に、現行の国際秩序がよって立つ基礎は意外としっかりしていることだ。「中ロのルール違反が甚だしいではないか」という意見もあろうが、中ロともに現行国際秩序を破棄し別のものに置き換えるつもりはないし、できもしない。この点が少し曖昧であった中国も、習近平国家主席の最近の発言は、国連憲章の精神と原則、国際法に基づく国際秩序を強調したものになってきている。

 同時に欧州の主要国ひいてはEUが、現行の国際秩序を日本と同様に理解し、その強化に努めなければならないと考えていることもはっきりしてきた。日本と欧州は、現行国際秩序を強化すべく協力する必要がある。

 第2に、世界は間違いなく多極化世界に入ったことだ。米国際政治学者のイアン・ブレマー氏は、それを「Gゼロ」と称し、リーダーのいない世界を想定している。米国の国際的な指導力は確実に低下してきている。相対的な国力の低下に加え、米国内の対立と分裂が、米国の対外姿勢に対する不確実性を高め、信頼感を損ねているのが痛い。

 米国が開かれた自由な国であり続ける限り、総合国力において中国に抜かれることはないと見てよい。だが米国の伝統である自国第一主義は、往々にして国際協調を犠牲にする。しかも国内の分裂は外交にまで影響し、内向き傾向はさらに強まる。世界は、そういう米国を見て対応し始めている。対ASEAN(東南アジア諸国連合)外交をはじめ、これまで以上に丁寧な対応をしなければ、諸外国は米国になびかないのだ。

 この世界をリーダーのいない世界にしてはならない。中国も一国だけで世界を引っ張る力は全くない。後述するように、多極化世界においても、「極」間の協力を通じて新たなリーダーシップを確立することが不可欠なのだ。

 第3に、米国と中ロとの関係が大きく変化してきた点だ。米国は2017年12月、「国家安全保障戦略」を発表。中国とロシアを並べて「米国の力、影響力および利益に挑戦し、米国の安全と繁栄を損なっている」と断定し、全面的に対抗する姿勢を明確にした。これは中ロ両国の行動に対する米国の基本認識と姿勢の表明であった。

 中国は、2010年に対外強硬姿勢に転換し、実力による現状変更を辞さないと明らかにした。2017年には、2050年頃までに米国に追いつく目標を内外に宣明した。ロシアは、2014年にウクライナ領クリミア半島を併合し、ウクライナに対する圧力を強めた。中ロ両国が軍事力を量と質の両面で増強したことも米国の不安をあおった。

次ページ 中国はロシアを、ロシアは中国をカードとして利用する