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環境活動家のグレタ・トゥンベリさんは2019年12月、スペインで開催されたCOP25に出席するために米国からヨットでポルトガルまで移動した(写真:AP/アフロ)

 2019年、世界中のメディアがスウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥンベリさんの一挙手一投足を追いかけた。12月にグレタさんがスペインで開催された第25回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP25)に出席するために、米国からポルトガルにヨットで到着した際には、英公共放送BBCはライブ映像付きで速報を流していたほどだ。

 グレタさんは18年から金曜日に学校を休み、スウェーデン議会の外で気候変動対策を呼びかけるストライキをしており、19年の初めは主に欧州で話題となり、欧州各地で共感する若者によるストライキが熱を帯びて広がっていった。

 世界中で脚光を浴びるようになったのは9月からだ。国連本部の気候変動サミットで各国首脳を前に対して、「私たちは大量絶滅のとば口にいる。しかし、あなたたちが話すのはお金や経済発展が続くというおとぎ話ばかりだ」「失敗したら私たちは許しません」と声を震わせながら非難したことが全世界に配信され、日本での報道も増えた。米タイム誌による年末恒例の「今年の人」にも選ばれ、雑誌の表紙を飾った。19年は「グレタさん現象」が世界を席巻したと言える。

 確かに若者たちはグレタさんの問題意識と行動力に共感し、声をあげている。ストライキへの参加者数などは分からないが、実際に英国、フランス、ベルギー、イタリアなど欧州各地で若者たちのストライキを見た。路上で楽器を鳴らしたり、歌ったりしながらも、気候変動対策を訴える若者たちは真剣だった。

 若者は環境問題を感じやすいのだろうか。我が家の息子も普段は聞き分けがいい方ではないが、環境問題には敏感だ。それが欧州在住のため教師が環境教育に熱心だからなのか、子供特有の感性なのかは分からない。

世界中がグレタさんをチェック

 グレタさんを追いかけたのはメディアだけではなかった。一般の人々も交流サイト(SNS)などを使ってグレタさんの行動を追い続けた。グレタさんはできるだけ環境負荷をかけないように、飛行機を使わず、ヨットや鉄道で移動している。ヨットで大西洋を横断した際には、手厚い支援を受けているという特別待遇に対して批判の声もあった。

 さらに進んで、今や「普通の生活」をするだけで批判される状態にある。象徴的だったのが、グレタさんが鉄道を利用していることに対する登山家、野口健氏の皮肉だ。

 「飛行機が×という方はもちろん車も×だろうし、てっきりヨット以外は馬車でご移動されていらっしゃるのかと想像をしていましたが…」と投稿。「大人げない」との非難もあったが、野口氏の意見に賛同する者も多かった。

 実際、グレタさんの激しい言葉使いと巧みな戦術に反感を持つ大人は多い。その代表的な考えが、ロシアのプーチン大統領と米国のトランプ大統領の発言に表れている。

 プーチン大統領は「現代の世界が複雑で多様であることを誰もグレタに教えていない」「グレタは優しくて誠実な少女だと確信しているが、大人は未成年者が極端な状況に陥らないように全力を尽くすべきだ」などと発言。トランプ大統領は「明るく素晴らしい未来を楽しみにしているとても幸せな少女のようだ」と評した。

 こうした意見の根源には、「グレタさんの活動は偽善ではないか」という反感がある。そのため、その活動を支持する輪が広がるほど、世界中で交流サイト(SNS)などを使ってグレタさんの「偽善」を突き止めようとする動きが強まっている。実際、SNSなどで「グレタ」「偽善」と検索すると多くのコメントが出てくる。英語で偽善を意味する「hypocrisy」で検索するとさらに大量のコメントがある。

 まず筆者の立場を明確にしたい。彼女の危機意識に耳を傾けることは重要だと思っているが、あまり彼女の活動そのものの賛否を論じる気になれない。グレタさんは既に社会的に大きな影響力を持っているが、自分が彼女と同じ16歳だったときを想像すると、その発言が大人たちに寄ってたかって強く批判されるのは耐えられそうにない。背後で大人たちが彼女を操っているならば、話は別だが。

 ただ、環境問題に対する危機意識と同時に、注目すべき点があると思っている。それは多くの人に環境負荷の善しあしを考えさせているという点だ。例えば、既に彼女は、二酸化炭素(CO2 )排出量が多い飛行機の利用を恥だと考える「フライト・シェイム(飛び恥)」という言葉を一般に知らしめている。世界中の人々の目を環境負荷に向けさせたことは、非常に意味があるのではないだろうか。