全2769文字

海外の海賊版サイトからスタート

 存在感が増すクランチロールだが、サービス開始直後は、日本アニメの「ファンサブ」が数多く投稿される動画共有サイトだったとされる。ファンサブとは、ある映像作品のファンがそれに字幕を付けたもの。すなわち、権利者の許諾のない「海賊版」である。

 こうしたサイトが登場したのは、以前は日本のアニメを日本での放映と同時期に視聴するのが非常に難しかったため。それだけに、海外在住の日本アニメのファンは、ファンサブの投稿サイトを視聴する傾向が強かった。

 近年はこうした状況が改善し、「公式」の日本アニメを日本の放映と同じタイミングで視聴できるさまざまな配信サービスが登場している。クランチロールもそうしたサイトの1つとなった。

 転機は、2006年のサイト立ち上げから約2年が経過した2008年。テレビ東京との業務提携だった。これを契機に、「NARUTO(ナルト)」(原作は漫画)といったテレビ東京が放映している人気アニメをクランチロールで配信できるようになった。

 さらに2010年にはテレビ東京が出資するなど、関係を深める。現在では、テレビ東京のアニメ番組だけでなく、ライセンスされたさまざまな日本アニメを幅広く配信している。月額7.99米ドル(税別)のプレミアム会員になれば、日本での放送と同日に、日本アニメを視聴できる。

シリコンバレーでプライベートイベント

 クランチロールの勢いを物語るのが、年次のプライベートイベント「Crunchyroll Expo」だ。2019年8月30日~9月1日にサンノゼで開いた3回目のイベントの会場は、米フェイスブックや米エヌビディアといった大手IT企業や半導体メーカーがプライベートイベントを開催する場として知られている。それだけに、「勢いがある証拠。アニメ業界で今、大きな会場を借り切ってイベントを開催できるのはクランチロールくらいだろう」とある日本人ゲーム開発者は評する。

2019年8月30日~9月1日には、3回目になる「Crunchyroll Expo 2019」を米国サンノゼの「San Jose McEnery Convention Center」で開催した

 クランチロールと協業するアニメ制作会社やゲーム開発会社などが登壇するカンファレンスに加えて、会場には広い展示スペースがある。アニメ制作会社やゲーム開発会社といったコンテンツホルダーのほか、アニメ映像のDVDや関連のグッズ、プラモデルなどを販売する小売店がブースを構える。日本の「コミケ(コミックマーケット)」のように、自作したグッズを個人が販売している小さなブースも、所狭しと並んでいた。

 同イベントは有料(早期購入で3日間パスが65米ドル)にもかかわらず、会期3日間で4万5000人以上が参加したという。日本アニメの人気とともに、クランチロールの浸透ぶりがうかがえる。

「Crunchyroll Expo 2019」の展示会場の様子
「Crunchyroll Expo 2019」の展示会場には、日本のコミケのように、自作したグッズを個人が販売している場所もある