日本のアニメーション業界が、海外展開で関係を深めているコンテンツ配信基盤(プラットフォーム)がある。それが、「Crunchyroll(クランチロール)」だ。運営するのは、米ワーナーメディア傘下のオッターメディアの子会社である米Ellation(イレーション)。クランチロールでは、英語やフランス語など8言語に対応し、対象の国や地域は200を超える。無料会員数は2019年8月時点で5000万人、有料会員数は200万人に達した。視聴できるアニメ作品の数は1000タイトル以上で、3万エピソードを超え、「世界で最も大きなアニメライブラリー」を称する。

日本アニメはファン(愛好者)が世界中におり、米ネットフリックスといった動画配信業界でも、「キラーコンテンツ」の1つとして位置付けられている。だが、「OTAKU(オタク)」と呼ばれるような日本アニメの海外ファンにとって、ネットフリックスよりもむしろクランチロールの方がなじみがあるだろう。
日本のゲーム業界からも注目を集めている。アニメファンはゲーム愛好者(ゲーマー)でもある場合が多いからだ。クランチロールによれば、同社を通じてアニメを視聴するユーザーの9割以上がゲーマーで、6割以上がより熱心なコアゲーマーだという。さらにクランチロールは漫画やキャラクターグッズなども手掛けており、米国を中心にOTAKUの一大プラットフォームになっている。
こうした状況に目を付けた日本のアニメ業界やゲーム業界がクランチロールとの関係を深めている。2019年12月、小学館や集英社などが出資する米ビズメディアは、「ナルト」シリーズの映画や「アクセルワールド」、「ワンパンマン」といった人気のアニメ作品を新たにクランチロールで配信することを明らかにした。ビズメディアの欧州子会社は、現在はクランチロール(イレーション)の傘下にある。
ゲーム分野では、バンダイナムコエンターテインメント(BNE)が同年8月にクランチロールとの業務提携を発表。9月には、サンライズや創通とライセンス契約を締結し、「機動戦士ガンダム」や「新機動戦記 ガンダムW」などガンダムシリーズ5作品で、関連グッズなどを海外市場向けに商品化する。

スマートフォン向けゲームを手掛けるNextNinja(東京・品川)も、クランチロールを積極的に活用する企業だ。同社が開発・運営しているスマホ向けRPGゲーム「グランドサマナーズ」(配信:グッドスマイルカンパニー)の海外でのプロモーションやマーケティングなどで、クランチロールのユーザー基盤を生かしている。
「グラサマ」は日本でも著名なゲームで、北米を中心とした海外でも人気がある。その事業拡大に一役買っているという。「アニメファンの多くがゲーマーで、多数の海外アニメファンを抱えるクランチロールは海外でのプロモーションやマーケティングで重要な役割を果たす」(同社代表取締役社長で、同ゲームのプロデューサーの山岸聖幸氏)と評する。

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