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 ホリデーシーズンを迎え、ニューヨークの街もクリスマスの飾り付けで華やいできた。2019年もあと十数日。年末を前にニューヨークにいて感じるのは、ちょうど今、同市が新しい顔に生まれ変わる「夜明け前」だということだ。その新しい顔とは「テック集積地」としてのニューヨークである。もともとシリコンバレーなど西海岸を拠点としていたGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)などテック大手が、続々と同市にやってきて、物件契約を結んでいる。

 最初に大きく動いたのがアマゾン・ドット・コムだった。第2の本社「HQ2」を創業の地であるシアトル以外に置くと盛大に発表し、全米の複数都市に助成金などの誘致条件を競わせ、最終的にニューヨークを選んだ。ところが19年2月、「なぜ大金持ちの大企業に庶民の税金を提供しなければならないのか」と地元住民の大反発に遭い、破談となった。

 ふたを開けてみれば、アマゾンが欲しかったのは助成金ではなかったようだ。複数の地元紙によると、水面下(わざわざ表ざたにする理由もないが……)で新たな拠点候補地を物色し、12月初旬、全米最大の民間大型開発案件であるハドソンヤード地区で、33万5000平方フィート(約3万1000平方メートル)のオフィスの賃貸契約を結んだことが明らかになった。ここで1500人の雇用を見込むという。

 そのハドソンヤードの写真が下。ベッセルと呼ばれるあばら骨のような建造物が中心にあり、観光地にもなっている。ちなみに地元住民によると、ハドソンヤード周辺の西部はもともと「ドラッグ売人の巣窟」とささやかれる危険地域だったそうだ。筆者もこのエリアに住んでいるが、長年のニューヨーカーにそう伝えると必ずと言っていいほど顔をしかめられる。

ベッセルは16階層で、階段でもエレベーターでものぼれる。このベッセルを囲むように高層ビルが配置されている。写真のベッセルの左側にモール、オフィスが入居する複合ビルがあり、トレンド発信地になっている
マンハッタン島の中央、西側に位置する。すでに完成しているオフィスビル「55 Hudson Yards」と、「50 Hudson Yards」は、90%以上の権利を三井不動産が保有する

鼻息荒いフェイスブック

 ハドソンヤードに目を付けているのはアマゾンだけではない。ここから南東のエリアに4万5000平方フィートの拠点を持つアップルも、新たに75万平方フィートのオフィススペースを物色中で、その候補にハドソンヤードが入っていると言われている。またグーグルは、都市開発などを手掛ける子会社の本社を既にここに置いている。 

 この地に最も熱い視線を送っているのがフェイスブックだ。同社は11月中旬、50 Hudson Yardsのビルに120万平方フィート、30 Hudson Yardsに26万5000平方フィート、55 Hudson Yardsに5万7000平方フィートのスペースを借りる契約を結んだと発表した。実に東京ドーム3.3個分の広さだ。

 ウォール・ストリート・ジャーナルの報道によると、同社はさらに12月、ハドソンヤードから東に行った所にある歴史的建造物、ジェームズ・ファーレー郵便局跡地にも70万平方フィートのスペースを借りようとしているという。すでにあるオフィスの敷地面積も合計すると、300万平方フィートにも上るといい、実現すればJPモルガン・チェースやバンク・オブ・アメリカに並ぶ、ニューヨークで最大規模のオフィステナントになる。