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3人の「経験者」が残した教え

 弾劾の手続きを経て職を奪われた大統領は、米国の歴史上、1人もいない。

 最後の裁判まで進んだのは、1868年のアンドリュー・ジョンソン氏と1998年のビル・クリントン氏の2人だけ。いずれも上院で否決され、罷免を免れた。またウォーターゲート事件で有名なリチャード・ニクソン氏に対しても弾劾手続きが取られたが、1974年、上院の裁判に進む前に自ら辞任した。これら過去の3件の弾劾は、トランプ大統領の今後を占う上で重要なポイントを教えてくれる。

 1つは、第4段階となる上院での弾劾裁判まで進む過程で、自身の所属する政党から十分な支持が得られているかどうか。クリントン氏は自身の政党である民主党からほとんど反対者が出ず、支持を得られていたのに対して、ニクソン氏は第2段階の下院司法委員会の投票からすでに自身の政党である共和党から弾劾賛成の票が出ていた。

 もう1つが国民の支持だ。ウォーターゲート事件が発覚してから、ニクソン氏の支持率はどんどん下降したのに対し、クリントン氏の支持はむしろ上がっていた。クリントン氏の場合、ホワイトハウスのインターン生との不適切な関係について「関係はなかった」と、いったんは嘘をついたことが弾劾の対象となった。だが、多くの国民が「大統領の立場を追われるほどの罪ではない」と考えていた。

 以上の点を踏まえつつ、トランプ大統領の今後を推察してみたい。

ニューヨーク・タイムズ元幹部の見方

 先日、ニューヨーク・タイムズの幹部を数年前に辞めて独立した女性に会う機会があったので、今後をどうみるか聞いてみた。彼女は海外で生まれ、幼い頃に米国にやってきて、成人してからはずっとニューヨークで暮らしている。個人的な見解なので名前は伏せる。そんな彼女の開口一番がこれ。

 「(聞いてくれてありがとう、といった感じで)オー・マイ・ガッド! 弾劾されてほしいけど、されないでしょうね。米国の歴史の中で誰も弾劾で退職した人がいないのは知っているでしょう? 私が弾劾されてほしいと言ったのは、彼の日ごろの品格のない発言とか他人を侮辱した態度とか、そういう人格が好きではないから。でも政治家として見ると正しい政策を採用しているときもある。だから、とても複雑な気持ち」

 弾丸のように一気にトランプ氏への思いを話した後、急に落ち着いた調子でこう切り出した。

 「民主党の本当の狙いは弾劾ではなく、2020年の選挙戦をどう勝ち抜くかにあると思う。これは私なりの見方なんだけど……」

 続きをお伝えする前に少し、トランプ大統領のウクライナ疑惑について復習しておきたい。