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 2019年10月31日、米議会下院がドナルド・トランプ大統領の弾劾調査の手続きを定めた決議案を賛成232、反対196で可決した。これは、トランプ大統領のウクライナ疑惑について、正式かつ公の場で、国民に広く内容を開示しながら調査を進めていく手はずが整ったことを意味する。

記者会見をする民主党のナンシー・ペロシ下院議長。ペロシ氏の指示でトランプ大統領の弾劾手続きが始まった(写真:ロイター/アフロ)

 読者の皆さんも、取引先や同僚の米国人と弾劾について議論することがあるだろう。ちなみにニューヨークでは、この話題を持ち出すとほとんどの人がマシンガンのように語り出す「鉄板ネタ」となっている。今回は、「弾劾って何?」「これからどうなるの?」といった基本的な知識について、米国人の生の声とともにおさらいしてみたい。

下院が「検察官」で上院が「陪審員」

 米国でいう弾劾(impeachment)とは、大統領や裁判官を含む全ての文官に対して行使できる行政の制度で、有罪判決を受けるとその人は職を免ぜられる。裁判所とは関係なく、完全に政治的な手続きとなる点がポイントだ。有罪となっても、刑罰が与えられるわけではない。

 対象となる罪は、①反逆罪(treason)、②収賄罪(bribery)、③その他重罪および軽罪(other high crimes and misdemeanors)の3つ。トランプ大統領の場合、ウクライナ疑惑が③の軽罪に当たるかどうかが争点となる。

 手続きは大きく4段階ある。第1段階は、米下院の誰かが「これは弾劾に値するので調査しましょう」と議会に弾劾決議案を提出すること。今回は、前出のペロシ氏が9月24日にウクライナ疑惑について調査開始を発表し、10月31日に下院が可決した。

 次に、下院が弾劾についての調査を始める。トランプ大統領の場合、まさに今、この段階が始まろうとしているところだ。下院の複数の委員会が調査を実施し、集めた情報を基に下院の司法委員会が判断する。これが第2段階で、ここで賛成多数となれば次へ進む。

 第3段階が、下院全員での投票だ。単純多数が弾劾に賛成すると、弾劾は正式に成立。今度は上院にバトンが渡される。弾劾では、下院代表が「検察官」を務め、上院議員は「陪審員」となる。最高裁判所の裁判官が裁判官となって、上院議員の67%以上が有罪と判断すれば、対象人物は罷免されることになる。