動画配信大手の米ネットフリックスが「日本重視」の姿勢を見せている。同社の有料メンバー(会員)数は、2019年7月時点で約1億5100万人に達し、提供地域は190カ国に広がる。そんな大手でも気を抜くことはできないほど、競争は厳しくなっている。動画配信では米アマゾン・ドット・コムや米アップル、米ウォルト・ディズニー、米フールーなど強力なライバル企業がひしめいている。こうした競争環境の変化もあってか会員数の伸びは徐々に鈍化している。19年4~6月期に増えた有料会員数は270万人と、ネットフリックスが事前に予想した500万人増の約半分にとどまった。1)

■参考文献
1)「ネットフリックス、米契約者数が減少 4~6月期」(日本経済新聞電子版 19年7月18日)

 そんな中でも順調に成長しているのが15年9月にサービスを始めた日本だ。19年8月時点の会員数は約300万で前の年と比べ77%増。ネットフリックスは日本は成長市場としてだけでなく競争を勝ち抜くための「切り札」と位置づけ、日本企業との提携にも積極的だ。19年9月6日に東京で開催した報道機関向けイベント「NETFLIX HOUSE:TOKYO 2019」はその証左と言える。

日本のアニメに着目、業界の救世主にも

 動画配信サービスの競争軸はオリジナルコンテンツの確保にある。ネットフリックスはオリジナル作品の拡充に取り組むなか、数年前から日本のコンテンツに着目してきた。「全裸監督」などの実写作品だけでなく、アニメーション作品の展開も積極的だ。

 例えば18年に配信を始めた「Devilman Crybaby」や「B: The Beginning」はいずれもネットフリックスが独占配信するオリジナル作品。9月のイベントでは、「世界初」(ネットフリックス)とする、4K、HDR(High Dynamic Range)映像という高い品質の手描きアニメ作品「Sol Levante」を発表した。日本の著名なアニメ制作会社プロダクション・アイジー(Production I.G)との共同プロジェクトで制作したもので、19年内に配信する。

4K HDR映像の手描きアニメ作品「Sol Levante」を発表
4K HDR映像の手描きアニメ作品「Sol Levante」を発表
4K HDRによって、髪の毛の細部や唇の「プルプル感」まで表現できるという
4K HDRによって、髪の毛の細部や唇の「プルプル感」まで表現できるという

 このプロジェクトとは別に、ネットフリックスはI.Gと18年1月にアニメ作品に関する包括的業務提携契約を締結。前出のB: The BeginningもI.Gが手掛けた。ほかにもネットフリックスは日本のアニメ制作会社と関係強化を進めており、18年1月にはボンズ、19年3月にはアニマとデイヴィッドプロダクション、サブリメイションの3社との提携を発表している。

 海外の動画配信サービス事業者が日本のアニメーションに注目するのは、「コスパがいいからだろう。制作にかかるコストの割にアニメファンをしっかりと囲い込めるという算段があるからではないか」(複数の日本のアニメ制作会社)とみる。もっとも、「日本のアニメ制作会社はどこも資金繰りに苦労している。制作コストをかけるネットフリックスとの提携は非常にありがたい」(同)と歓迎ムードもある。海外で評価が高い日本のアニメ作品だが、ビジネス面では後れを取っている。世界展開の面で、ネットフリックスとの提携は日本のアニメ制作会社にも恩恵がありそうだ。

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