後任に噂される元政府CTOは女性

 こうした中で伊藤氏の後任の所長の名前が取り沙汰されている。その1人がメディアラボの所長オフィスに所属しているミーガン・スミス氏である。

伊藤氏の後任に名前が挙がっているミーガン・スミス氏(MITメディアラボのホームぺージより)
伊藤氏の後任に名前が挙がっているミーガン・スミス氏(MITメディアラボのホームぺージより)

 スミス氏はオバマ政権下の米政府CTO(最高技術責任者)を務めた経験があり、米グーグルの新事業を率いてきた人物だ。アップルの日本法人にも在籍した経歴がある。事情に詳しい関係者は「クリーンなイメージがあり、資金を集めるための人脈も持っている。女性ということもあり候補として噂されている」と言う。性的少数者(LGBT)のコミュニティーにも参画している。

 ただスミス氏は伊藤氏、そしてネグロポンテ氏とも近いため、今回の問題に対して潔白かどうかが問われるだろう。

 伊藤氏が所長に就任するにあたり書いた2011年のブログ「MIT Media Labに参加するにあたって」で、ネグロポンテ氏とスミス氏で後継に伊藤氏を据える相談をしたことが読みとれる。スミス氏とのやりとりを以下のように記している。

 「Joi,MIT Media Labの所長になるのに興味ない? 実は今、ちょうどNicholas Negroponteとその話をメールでしていたの」と突然僕に言った。僕は、「うーん...よし、もちろんだよ!」と答えた。

 MITメディアラボは建築や都市計画などから発展し、コンピューターサイエンス、ロボット、バイオなど学際的な幅広い研究で注目され、成果を出してきた。必要な道具がなければ自分で作るというマインドが根付いている。各研究室の壁はガラス張りで中をのぞき込んで、研究者同士の連携が始まることも少なくないという。

 メディアラボには伊藤氏の呼びかけに応じるなどした複数の日本企業が研究費を提供。それらの企業が研究員を送り込んでいる。各社ともMITメディアラボと共同研究といった内容のプレスリリースを出すなど、研究開発の成果に加えてブランド効果も得ていた。今回の問題を受け、そうしたMITメディアラボのブランドは毀損されたと言える。

 エプスタイン問題の影響度はそれほどのものなのか。次期体制がどうなるのか。今後の契約をどうするのか。MITメディアラボに研究費を提供する日本企業も固唾をのんで見守っている状況だろう。

 MITはエプスタイン氏の問題だけでなく、中国との関係でも岐路に立たされている。2018年には連邦政府の調査をきっかけに、中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)からの新規資金を受けることをやめている。中国からの学生の受け入れについても、技術流出の観点から議論が巻き起こっている。

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