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被害者を加害者にする手口

 エプスタイン氏が虐待した女性たちが今になって声を上げ始めたことも、伊藤氏の状況をさらに悪くしている(08年の摘発前から事件を追っていたフロリダ州の地元紙マイアミ・ヘラルドの動画)。

 被害者の女性の多くは14~16歳くらいの時に「マッサージをしたらお金を払う」と勧誘され、ニューヨークやフロリダなどにあるエプスタイン氏の邸宅や同氏が所有する飛行機の中で性行為を強制された。特に飛行機の中では、エプスタイン氏の数々の著名な知人たちのために強要されることもあったという。米メディアの報道では、その著名人としてビル・クリントン氏や英国のアンドルー王子の名が挙がっている。

 勧誘されたのは、親がドラッグ中毒者など家庭環境に問題を抱える子たちばかりだ。行為の後、200ドルが手渡される。10代にとっては大金だ。少女の勧誘やエプスタイン氏の指示に従うための教育・管理は、エプスタイン氏の知人女性が担当していた。

 中には近隣のショッピングセンターなどでほかの少女を勧誘してくるよう指示された被害女性もいた。その一人は「なぜ自分と同じ立場にほかの子も追いやってしまったのか。今でも罪悪感にさいなまれ続けている」と告白している。

 もちろん、こうした数々の事件を起こしたのはエプスタイン氏で、伊藤氏には関係がない。だが、伊藤氏がメディアラボでエプスタイン氏の存在を隠し続けたことで、前出のスウェンソン氏のように全く関係のない人たちを巻き込んでしまった。

 スウェンソン氏はニューヨーカーの記事の中で、記事が出る前に伊藤氏やMIT関係者がエプスタイン氏との関係を隠そうとしてウソをついているのを見聞きするたび、罪悪感にさいなまれていたと語っている。「私も14年当時、(メディアラボと)エプスタイン氏との関係を隠そうとした関係者の一人ですから」。伊藤氏とMITメディアラボを巡る醜聞は簡単に収まりそうにない。