タイの主要航空会社がその影響を既に受けている。タイ国際航空など上場航空会社4社の2019年1〜6月の最終損益はタイ・エアアジアを保有するアジア・アビエーションが僅かな黒字を確保したのを除き3社が赤字で、バンコク・エアウェイズは前年同期の黒字から赤字に転落した。タイの主要英字紙バンコク・ポストは「国際線で中国の需要落ち込みが響いた」と指摘している。さらに同紙によれば、AOTも8月末、2019年度通期の最終損益を前年度比6%増から1.5%増に下方修正した。米中摩擦や人民元安などの影響で客足が鈍るリスクを反映したという。

 中国人観光客が大挙して押し寄せ、爆買いをしていく光景は日本もタイも変わらない。ただ日本でその爆買い需要に一服感が出ているように、タイでも米中摩擦の激化や、それに伴う元安、中国当局のEC(電子商取引)規制などの影響により、中国人観光客の訪タイ、そして爆買いの勢いが従来に比べて鈍っている可能性もある。

 タイ政府は観光需要を刺激するため、中国やインド人に対するビザ(査証)の免除や、バーなど娯楽施設における深夜営業時間の延長など規制緩和を検討しているが、治安の悪化、風紀の乱れを懸念する声もあり、議論が続いている。一方で、8月にはインドネシアが観光市場の拡大を目的に、外国人観光客が付加価値税の免税を受けられる条件を緩和した。

 東南アジア各国の政府にとっても企業にとっても、中国人を中心とした観光客による消費は重要な収入源だ。その客足が鈍り、消費の減速がより顕著になった場合、企業間、そして国家間で観光客の奪い合いが激しくなる。東南アジアのビジネスには新興国特有の、何が起こるか分からないところがある。セントラル・ビレッジの開業騒動に見られたような、なりふり構わぬ競争が勃発する恐れはありそうだ。

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