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新たなリスク層を取り込むゴールドマン

 米国では基本的に銀行がクレジットカードを発行する。このため、アップルはゴールドマンと組んでクレジットカードを発行している。

 米国ではカードの利用履歴や利用代金の返済状況、利用限度額に対する利用率などで信用スコアが計算されている。若者や借金が多い低所得者などは、クレジットカードを作りにくい。筆者も渡米1年目はほとんどのクレジットカードの審査に落ちた。

 米国での報道によると、Apple Cardは他のクレジットカードに比べて審査基準を緩くしているという。このため返済しない顧客が増えて事業収益が悪化するという見方がある。その一方で、そうした層が決済の返済期日を越えて、高い利子を払ってApple Cardを利用するようになれば新たな収益源となる可能性もある。

 Apple Cardの提供に向けて、ゴールドマンは数百億円規模を投資しているとみられる。その多くはセキュリティーシステムの開発に充てているだろう。

ゴールドマンによるApple Cardのメリットの説明(2019年5月の同社IR資料より)

 Apple Cardは管理画面から「Request New Card Number」をクリックするだけで、即座に新しい番号とセキュリティーコードを発行してもらえるようになっている。例えば、オンライン用のカード番号が何らかの理由で流出した場合や、利用したeコマースのサイトが後から怪しいと分かっても、すぐに変更することで不正利用のリスクを大幅に下げることができそうだ。不要な人にはチタンの物理カードも発行しない。

 一時期、そうしたサービスを提供するFinTechスタートアップが登場し、話題になったこともあった。今後、ゴールドマンはこの仕組みを新しいカードサービスに横展開することが想定される。同社はこうしたセキュリティー対策を顧客にメリットのあるイノベーションと位置づけて、新しいクレジットカードの利用層を開拓する狙いだ。

 Apple Cardをメインのカードとするかどうか。しばらくは街中でApple Payがどの程度使えるのか確認する必要があるだろう。米国では飲食店での会計中にカード番号と名前、セキュリティーコードが盗み見されるケースが多いといわれる。こうしたリスクが高そうな店ではApple Cardを使いたくなる。

 アップルとゴールドマンは、他の金融機関のように個人に紐づくデータを他社と共有しないこともウリにしている。ただ、米国では多くのカードを持つのが普通だ。もはやさまざまな企業に情報が渡っているはずで、そこはあまりメリットには思わなかった。

 ただ、Apple Cardを利用する限り、iPhoneから抜け出すことは難しそうだ。Androidスマートフォンへの乗り換え阻止には相当効果があるだろう。