トヨタがリーダーになる可能性は?
トヨタ自動車がリーダーになる可能性はないでしょうか。
トヨタは素晴らしい会社です。トヨタの豊田章男社長はバブソン大学の卒業生で、先日、大学の創立100周年記念式典で講演をしてくれました。とてもファニーで、(彼がそんな人物だったと知らなかったので)驚きました。
トヨタは自動運転においては素晴らしい戦略を持っていると思います。トヨタ・リサーチ・インスティテュート(TRI)を率いるギル・プラット氏はとても聡明。推進する「ドライバーを支援する」というアプローチは現実的でいいと思います。一方、ゼネラル・モーターズ(GM)やフォードが巨額のカネをつぎ込む「ドライバーを機械に置き換える」というアプローチは、いつになったら実現するか分からず、投資分の見返りが得られるかどうかも未知数です。
ではトヨタがIoTのリーダーになるのかというと、そこは現時点では疑わしいと言わざるを得ません。トヨタがIoTの標準化でリーダーシップをとろうとしている様子はないし、バブソン大学に来ているトヨタ社員の話を聞いても、そんな傾向はみられないからです。
豊田社長は「つまらない仕事をするのはやめようよ」と社員に盛んに言っているようです。トヨタからエキサイティングなクルマを出そうともしている。でも、これはやはり「プロダクト・オリエンテッド」の発想です。いかに技術で世界を変えるか、という発想ではないようにみえます。
「つまらないAI」でも効果はある
では今後、AIやIoTは企業にどんな影響を与えていくと予想しますか。
需要と供給をつないで効率的な生産を実現する、エネルギー消費を最小限に抑える、求職者の傾向を分析して誰を雇用すべきか見極める――。AIやIoTはあらゆる領域で様々な利益を企業にもたらすことになるでしょう。まるで電気のように、どこにでも当たり前に存在するものになる可能性があります。
ただ、これまで話してきたように、そんな世界を手にするにはまだまだ時間がかかりそうです。といっても、現時点でAIやIoTの技術を企業活動に全く生かせないわけでもありません。あまり目立たないけれど、着実な成果を上げられる領域はたくさんあります。サプライチェーンで情報を共有することでムダな生産をしないようにする。あるいは消費者に送った販促メールがどんな効き目があったかをチェックして次に生かす、などです。
そんな活用は「つまらない」と言う人がいるかもしれません。でも、一定の利用価値はある。こうした領域から着実に成果を出していき、一方で、業界を挙げて標準化を目指す取り組みを進めていくことが、AIやIoTを活用するうえで成功の条件になるでしょう。

トーマス・ダベンポート教授は9月10日、モノづくりの未来について議論する「Future Manufacturing Summit 2019」に登壇し、AIやIoTを通じた企業経営におけるデータ活用のあり方、日本企業に必要な戦略などについて語る予定です。
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