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GEが陥った「IoTのワナ」

なぜGEでIoTがうまく機能しなかったのでしょうか。

 IoTは、非常に多くのセンサーからデータを吸い上げ、それらのデータを統合・分析することで何らかの利益を得るものです。工場全体の設備や機器をインターネットでつなげて生産効率を上げるとか、クルマに搭載している200を超えるセンサーの情報を基に自動運転を可能にするといったことです。

 ところが、この統合には高いコストがかかります。センサーの種類が増えれば増えるほど、カバー領域が広がれば広がるほど投資が必要になる。でも、その成果を得るまでに長い時間を要する。つまり、IoTのプラットフォーム・ビジネスは「もうけづらい」のです。

 私はIoT戦略において多くの企業をサポートしてきていて、GEもそのうちの1社でした。その活動の中で私は、彼らが抱えるいくつかの問題点に気づきました。中でも決定的だったのが「顧客ニーズの欠如」でした。

 GEの航空機エンジン部門が推進していたのは、モノの提供からサービスの提供への転換です。エンジンを顧客に納めて終わりではなく、エンジンに積んだセンサーからデータを集めて分析し、継続的にメンテナンス・サービスを提供しようとしていました。

 ところが、です。私がエンジンの最終ユーザーである航空会社に行って事情を聞いたら、彼らは「センサーからのデータを基にしたメンテナンスなら自分たちでやっている。データサイエンティストも社内にいて、データ分析ができる体制が整っている」と言っていました。GEが提供しようとしていたサービスは、そもそも顧客に求められていなかったのです。

重要度増すグーグル、アマゾンの存在

IoT標準化のリーダーの最有力候補だったGEが蹉跌(さてつ)のさなかにある。となると、もはやリーダーシップをグーグルやアマゾン・ドット・コムのようなIT大手に委ねるしかないのでしょうか。

 IoTでも、モノが関わっているとはいえ、データが集積されるのはクラウド上、データを分析するのもクラウド上、異なる標準間で「通訳」をして統合するのもクラウド上という現実があります。このクラウドの技術に強いグーグルやアマゾン、マイクロソフトのような会社が、IoTでも共通プラットフォームとなる可能性は十分に考えられるでしょう。

 しかもクラウドには、データの分析や活用で重要な役割を果たすAIのアルゴリズムがたくさん存在しています。この点から考えても、IT企業の動向は注視すべきです。

 ではなぜ製造業ではダメなのか。GEをはじめ多くの製造企業がIoTで成果を上げられないのは、「プロダクト・オリエンテッド(商品中心)」の考え方から抜け出せないからだと私はみています。